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第28話 帝国の闇

「あの……根本的なことを質問してもいいでしょうか?」


 ご自分の紙芝居に満足したルシア皇女は、いそいそとお茶を出す用意を始めましたので、隣にいるサフィーロ伯爵に質問します。


「何でしょうか?」

「そもそも何故、貴方がたのような立場の方が、ランドルフ殿下の周りにつくことになったのでしょう」


 そもそも、ここがあり得ないのではないのでしょうか?


「それは最もな疑問でしょう。私とルシアは同腹になります」


 母親が同じということですね。姿が似ていますので、そうかとは思っておりました。


「一言でいうなら、父はシスコンだということです」

「はい?」


 ちょっとおかしな言葉が入ってきましたわよ。皇帝がシスコン? それはランドルフ王子の母親である王妃様に対してというのですか?


「先代の皇帝はとても困っていたそうです。父がエリザベート様の婚姻を次々と潰してしまっていたからです」


 エリザベート様というのは正妃様のお名前です。私などは恐れ多く呼ぶことなどできません。


「次代の皇帝に寵妃ではなく、寵妹がいることをヨシとしない先代の皇帝と、何がなんでもエリザベート様を手元に置きたい父との攻防があったのです」


 ……確かに馬鹿王子を産んだとは思えないほど、現在も美しい王妃様ですし、色々人道支援もしていらっしゃるとお聞きします。

 先代の皇帝はいったい何を危惧されていたのでしょうね?


「そして父は竜人の末裔と言われているレイム族から妃を娶ります。私達の母です。それは、エリザベート様の護衛として娶ったのです」


 ん? エリザベート王妃の護衛ですか。なんだか話が繋がってきましたよ。しかし普通に護衛で雇った方が良かったのではないのでしょうか?


「それを知った先代の皇帝は保護してほしいという名目で、秘密裏にイグネア王国にエリザベート様を送り込んだのです。王妃として」

「何か矛盾してませんか? 秘密裏に王妃として迎えろということなのですか?」

「当時はまだイグネア王国は混乱の中にあったそうですので、そんなところにエリザベート様がいるとは父も思わないだろうということだったそうです」


 これは私の母が関わった何かしらがあった時代の話ですわね。しかし何があったのかは誰も語ってくれない話。


「そして粛清が起こります」

「話が飛びませんでしたか?」

「飛んでいませんよ。父が皇帝に剣を向けたのです。父は皇帝の意に従う者たちを次々と血に染めていきました。それにより帝国は混乱に陥ったのです」


 これは普通は反乱と捉えられるべき内容です。しかし、最終的に勝ったのが現皇帝であり、サフィーロ伯爵の父であったので、粛清という言葉になったのでしょう。


「混乱が収まった頃にはエリザベート様はイグネア王国の王妃となりランドルフ殿下も生まれていました。それに父曰く『あの聖女を相手にするには骨が折れる』ということで、今の現状になります」

「最後、すっ飛ばしましたね。竜人の末裔のレイム族の血が入っているサフィーロ伯爵……」

「リカルドだと、何度言えばいいのでしょうかね?」


 近い。近いですわ。私の肩を掴まないで欲しいです。

 サフィーロ伯爵の手を外せないと思っていましたら、傭兵を生業としていることで有名なレイム族だったからですか。

 私の目には映りませんが、見た目でレイム族の側近がいれば、おいそれとは近づこうとはしないでしょう。


 しかしちょっと近すぎます。


「お兄様。ラブラブ」

「どこがですか!」

「イーリア嬢は婚約者ですからね。ルシア。ランドルフ殿下を起こしてお茶にしましょう」



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