第26話 盛り放題
サフィーロ伯爵と並んだ姿を見れば一目瞭然。
絶対に帝国の皇族の血が入っていると思われる整った容姿に銀髪。サフィーロ伯爵と同じ青い目を黒縁の眼鏡で覆っている姿。
どうみても兄妹です。
そして私の目に映る情報に、第二皇女とあります。
帝国はいったいどうなっているのですか?
何故、皇子と皇女を隣国の第一王子のために送り込んでいるのですか!
色々突っ込みたいところですが、紹介もされていない私が口を出すところではありませんから、貝のように口を噤んでおきます。
「お茶汲み係のルーたんです。よろしく」
ツッコミどころ満載の自己紹介をされました。これは第二側妃様の元で、お茶を淹れる専用の使用人と解釈していいのでしょうか?
そして、ルーたんとはそう呼んで欲しいのか、そう呼ばれているのかどちらの解釈で受け取ればいいのでしょう。
それを無表情で淡々と言われると、冗談なのかわかりません。
「それでイーリア嬢の目にはルシアはどのように映っていますか?」
「サフィーロ伯爵と……」
「リカルドですよ」
それまだ続けるのですか?
「……リカルド様とそっくりに見えます」
「流石です。イーリア嬢には小手先の魔道具など意味をなさないのですね」
「近い。近いです」
離れていたところにいたサフィーロ伯爵は、私に詰め寄ってきて、跪いて私の右手をとってきました。
「しかし、これはこれで困りましたね。ルシアの姿で、空のような青い髪にすることはできますか?」
「東方に住まうレイム族のような感じですか?」
この王国の東側の山岳地域にレイム族という種族がいるのです。なんでも竜人の末裔だと自称しています。ですが、皮膚が鱗化している竜人がいたというのは神魔時代の話なので、嘘か本当かなど、誰も立証などできないことです。
「ええ。そうです」
目の前のルシア皇女の姿で髪を青くすればいいということでしたら、簡単ですわ。
幻影の術を使って姿を目の前のルシア皇女の生き写しのようにし、色変えの術を使って髪の色を変える。
服まで変えるのは面倒ですので、紺色のドレスを身にまとったルシア皇女もどきができあがりました。
ルシア皇女はメイド服を着ていますので、今の私とはそんなに変わらないと思いますわ。
「な……なんだと!」
そこに第一王子が室内に入ってきました。
「胸の詰め物はどこから出てきた!」
「幻影ですわ! 馬鹿王子!」
サフィーロ伯爵の手を振り切って、馬鹿王子の横腹をえぐるように拳を振るいます。
「いいパンチだ」
私の攻撃を褒めながら倒れていく第一王子。私の元にテトテトとやってくるルシア皇女。
そして幻影で作られた胸を掴まれました。
「これが幻影……盛り放題」
……この失礼な皇女も殴っていいでしょうか?
読んでいただきましてありがとうございます。
投稿カツカツなのですが、1万pvとブックマーク100件(今の所)達したので、お礼に追加投稿です!
『モブ令嬢は皇子のスパイ』を気に入っていただき、ありがとうございます。




