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第21話 あれ?この婚約を解消すると……

「素晴らしい!」

「ひっ!」


 右手を両手で掴まれてしまいました。それから近いです。


「気配を感じさせない使用人は、質が高いというのは常識ですが、これほどとは予想外すぎて嬉しい限りです」


 ……もしかして最初に私が目をつけられてしまったのは、目立たないように気配を消していたからなのですか?

 逆に気配がなさすぎて目立ってしまっていたと?


「喜んでいただけて光栄ですが、手を離していただけませんか?」

「アドラディオーネ公爵にはイーリア嬢を数日お借りすることに、了承していただいています」

「そうですか……手を……」

「明日の朝、迎えに参りますので、一緒に過ごしましょう」

「潜入調査ですよね? それに、とても急なお話ですね。手を離してください」


 王城に行くのは第二側妃様の離宮に潜入するためであって、サフィーロ伯爵と過ごすためではありません。って、何故一緒に過ごすという言葉が出てくるのですか?


「詳しい話は明日になりますが、現在潜入している者と入れ替わるために、その者になりきっていただく時間が必要かと思いましてね。それから一ヶ月後に南方へ視察という名の旅行に行くらしいので、早い方がいいでしょう。あと、婚約者の手を握るぐらい普通でしょう?」

「……書類上のと付け加えるべきですよね?」


 とても具体的なことが出てきたと思っていましたら、今現在潜入調査している者がいるということなのですね。

 しかし、その者では第二王子の乳母の手記を持ち出せないということなので、気配を絶っていた私に持ち出させようとしていたのですか。


 しかしそれで、婚約の書類まで作って婚約する理由にはなりません。いいえ、結局目的さえ達成すれば、ただの伯爵令嬢でしかない私との婚約など、解消すればすむことです。


 所詮私は凡人でしかありませんから。


「おや? おや? 二人の国主から認められた婚約ですよ? なかなか無いと思いますよ?」


 ん?……あれ?……これは簡単に婚約を解消できないと言われています? もし、どちらかの国主がこの婚約を反故すれば、国家間に亀裂が生じると……ま……まさかね……そんな大げさなことにはなりませんわよね?

 私は母とは違って、普通の伯爵令嬢なのですから。


「それで、いつになったら、リカルドと呼んでいただけるのでしょうか?」


 ぐっ……未だに右手を握ったまま、笑顔を向けてこないでいただけます?

 婚約届にサインをしたからと言って、会って二回目の方の名前など……呼べるはずないではないですか。


「イーリア嬢?」


 これがレイモンドなら、腕相撲並みにテーブルに手を叩きつけるところですが、先程からびくとも動きません。

 これは……もしかして……呼ばなければ手を離してもらえないということなのでしょうか?


「リ……リカルド……さま」


 くっ……恥ずかしいですわ。



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