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第20話 複製の価値はどれほどのもの?

「リカルドです」

「は?」

「リカルドと呼んでください」


 ……流石に会って二回目の人を名前呼びは如何なものなのでしょう。


「嘘を言うことで誤魔化そうとしなかったイーリアの誠実さに感銘しました」


 ん? 嘘?

 私は契約書に視線を向けます。先程まで黒いインクで書かれていた条件要項のいち部が薄い灰色になっていました。

 これはもしかして、噂でしか聞いたことがない、条件が満たされると反転するという特殊な契約書。


 そんな契約書を私との婚約届に用いたのですか?


「これ……国家間とかで用いる契約書ではないのですか?」

「ええ。そうですね」

「それを個人の契約に用いたのですか?」

「父が聖女マリー様のご令嬢であれば、これぐらい必要だと言っておりました」


 母の名が偉大過ぎて、私はこのまま穴蔵に潜っていたい気分です。


「私には、それほどの価値はありません……あ、これ念の為に複製していいですか?」


 違反すれば赤く反転すると聞いたことがあります。付け加えられた文言が赤くなった場合。私は早急に対応しなければなりませんから。


「『複製(コピー)』」


 すると帝国側が用意した契約書が二枚になり、どこをどう見ても全く同じものが私の手にあります。


 これも母直伝の魔法です。

『コピー機能は便利だから覚えておいて損はないの』と言いつつ、赤い宝石をコピーで増やす母をみて、何の資金にするのだろうと思ったものです。


 その複製したものをしまおうとすると、右手首をガシリと掴まれてしまいました。


「何ですか?」

「それはモノの複写ですか?」

「複製です。こちらが本物ですので、帝国で保管でもしておいてください」

「素晴らしいです! これはどう見ても全く同じ。筆跡も同じ。どこまで複製ができるのですか? 大きさは? 数は?」


 鑑定スキルより凄く食いつかれました。

 なんでもかんでもできません。


「では誰かの手記とか文字とかでも?」

「はあ……できますが、無駄なことはしませんよ」

「第二側妃の宮に侍女として侵入し第二王子の乳母の手記を持ち帰ってくることも可能ですか?」


 とても具体的なことを言われました。

 そしてサフィーロ伯爵は契約書の先程の下の段を示します。


『第一王子とアリアルメーラ公爵令嬢の婚姻の障害を排除することへの協力』という欄です。

 わかっていますわよ。契約書はきちんと読みましたから。


「可能です」


 こうして私はリカルド様と協力してランドルフ第一王子を王太子に押し上げるべく動くことになったのでした。



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