第19話 鑑定スキルは英雄しか持ち合わせない
「心外ですね。ハイバザール侯爵子息と同じと思われているのですか?」
「私を利用するのは同じでしょう?」
「利害の一致というものです」
モノは言いようね。
「それでは、この契約の施行をお願いしたいですね」
サフィーロ伯爵は婚約届に偽装した契約書のいち部を示しながら言ってきました。
どうやって私がサフィーロ伯爵の正体を知ったかということです。これは一番知られたくない者に言わなければならないということです。
「この契約書に内容について口外しないこと、何かの書類等にも残さないことを明記して欲しいものです」
これは既に名を書かれた皇帝が除外されないのが痛いですが、何にも残さないということで対応できるはずです。
「いいでしょう」
その文言を書き加えるサフィーロ伯爵。
それを確認した私はパチンと指を鳴らします。防音の魔法です。
領地改革をやっていますと色々ありますからね。この魔法は重宝します。
「これは?」
「防音の魔法を私達の周りに張らせていただきました」
「徹底されていますね」
「本当に知られるのは嫌なので……はぁ……鑑定スキルです」
「え?」
「鑑定スキルで見ました。アリアお嬢様がランドルフ王子殿下との婚約を嫌がっておりましたので、鑑定スキルをランドルフ王子殿下に使っていたところ、サフィーロ伯爵のステータスも見えてしまっただけです」
はぁ、これを誰かに知られるなんて最悪です。
……ん? 何も反応がない?婚約届という名の契約書から視線を上げれば、呆然としているサフィーロ伯爵が視界に映りました。
「そ……それは勇者や賢者など歴史に名を残した方々しか持つことがないというスキルではないですか」
「母も持っていますが?」
「聖女マリー様の名も歴史に刻まれていますよね?」
そうですね。天上から王国を救うために降り立った聖女とか言われています。が、私が生まれる前のことですので詳しくは知りません。
父に聞いてみたことがあったのですが、スルッと違う話になってしまったので、言いたくないのだろうと子供ながらに思いました。
「それに知られれば教会に隔離されますね」
「だから言いたく無かったのです」
母も一度教会預かりになったそうなのですが、教会から追い出されたと言っていました。母の扱いに困って外に出したのでしょうね。
鑑定スキル持ちはその昔、神の目を持つ者と言われて、聖人扱いされたようです。今もその扱いが残っており、鑑定スキル保持者と分かれば、教会に否応なしに連行されるのです。
「大丈夫です。もし、そうなった場合は私の肩書が役に立ちますよ」
「その前にサフィーロ伯爵様が話さなければ何も起こりません」
読んでいただきましてありがとうございます。
やはりペースダウンします。
今週と来週の休みが無くて書く時間があまり……
朝と夜投稿の二回目かな?
音信不通になったら、書けなかったのだなと、思っていただけるとありがたいです。すみません。