第16話 離せと話せの攻防
あっ……あまりにもの軽々しさに思わず言ってしまった。
「今、口にしたことはお忘れください。私はお嬢様の元に向かいますので!」
掴まれている右手を振り切ろうとしましたが、ガシリと掴まれて離れません。
「離していただけますか?」
「どこから、その話を聞いたのか話していただけませんか?」
笑顔で返されたので、私の笑顔で返します。
「いつまで私の手を握っているつもりなのでしょうか?私はアリアお嬢様の元に行きたいのです」
「でしたら、このまま一緒に行っても問題ないですよね?話していただけますよね?」
「別にサフィーロ伯爵と仲が良いわけではありませんので、一緒に行く必要もないです。離してください!」
「先に話していただくほうが先です」
離せと話せの攻防が続いていると、互いの主が戻ってきました。
「何をしているんだ?」
「どうかしましたの?」
その声がする方に視線を向けますと、仲の良い雰囲気を醸している第一王子とアリアお嬢様がいます。
「アリアお嬢様! お嬢様のお側に行こうとしていましたのに、この男が手を離さないのです!」
取り敢えず私よりも地位の高いアリアお嬢様に訴えます。
「イーリア嬢の能力に惚れ惚れしまして、求婚したところ断られてしまったのですよ」
「いいように利用しようとしたと言うべきですね!」
「ランドルフ殿下とアリアルメーラ公爵令嬢様を支えるにはいいと思ったのですが……」
「それは建前ですよね!」
「それはいい!」
この馬鹿殿下! 何を賛成しているのです! この男が帝国の第二皇子ということを知っているはず!
「私はアリアお嬢様を支えるために人生を捧げますので、結婚とかは遠慮いたします!」
それにこの話は受けない方が良い。帝国の第二皇子となれば、内々に妃が決められていることでしょう。
ということは二回目の婚約破棄もしくは婚約解消となり、私の評価がだだ下がりになってしまいます。
するとアリアお嬢様の立場を悪くする可能性があるのです。
この話は絶対に受けません!




