第14話 デコピンのお仕置き
「勿論、ランドルフ殿下の味方ですよ?」
嘘か本当か計り知れない笑顔で言い切るサフィーロ伯爵。
「そうですか。でしたら、このような言動をされるランドルフ王子殿下を諌めるのが貴方の役目ではないのですか?」
「殿下の意に沿うのも側仕えの役目ですので」
……これはどういう意味なのでしょう。
はっきり言って第一王子のステータスから乖離している言動です。教えれば、学習できるはずです。
ですが、これがワザとだった場合。シュトラール帝国から来られた王妃様の子としてこの国では立場が微妙だと言うことなのかもしれない。
第二王子の母親はマルメイヤー公爵家から第二側妃になった方です。先代国王の王弟であるマルメイヤー公爵は国王陛下に次ぐ権力者。
出来の悪い王子を演じ、マルメイヤー公爵の魔の手から逃れている可能性もある。
そうなると、この人物が第一王子についているのも理由になる。帝国から来た王妃が信用できるのは帝国からの人材。
「そうですか。それは失礼しました……しかし、お嬢様への対応には口出しをさせていただいます。バラはそちらでご用意してください」
「お! トカゲだ!トカゲがいる……いっ!」
「お嬢様は爬虫類や虫や両生類は好みではありません。水槽に入った金魚や鳥かごに入った小鳥程度ならお見せいただいて大丈夫です。ご理解いただけましたか?」
「頭が痛い」
「ご理解いただけましたか?」
「わかった……」
第一王子は額をこすりながら、理解を示してくださいました。別に私は第一王子が王太子になろうが、第二王子がなろうがどちらでもいいのです。
馬鹿王子のままでも、私はもうこれ以上言わないでおきましょう。アリア様が関わらないことにはです。
「よし! アリア! 蝶を捕まえよう!」
「馬鹿王子! 蝶は受粉のためにいるのですから全部捕まえては駄目ですわよ!」
第一王子はアリアお嬢様の手を引っ張って、植物が生い茂る温室の奥に消えていった。
「もしかしなくても仲がいい?」
私は首を傾げながら、二人が消えた場所を見ていました。
第一王子という身分がなければ、おそらくお二人は上手くやれそうな気がします。
「アリアルメーラ公爵令嬢様は根気よくランドルフ殿下に付き合っていらっしゃいますからね」
根気よくというよりも、従兄妹という立場で昔からよく顔を合わせていたということに由来するのではないのでしょうか?
私はサフィーロ伯爵に笑みを向けて、頭を下げます。
「では、私はアリアお嬢様の後についていきますので、失礼いたします」
「おや? 行き先は同じですので、ご一緒いたしましょう」
「ふふふっ。結構ですわ」
「そう、おっしゃらずに、因みに今の私の髪の色は何色に見えますか?」
ここで私の失言をぶち込んできました!
今はということは、青では無いとも取れますし、私の色盲の疑いがかけられているとも取られます。
これはどう答えるのが正解なのでしょう?




