第135話 話が飛びすぎてわかりません
「皆のもの! 騒がせた。今日の祝の席に招待した客人がいる。皆のもの出迎えてくれ! シュトラール帝国から来ていただいたサイファザール皇太子とメリーヌ第三皇女だ」
ランドルフ王太子の機転により、客人の紹介が繰り上がり、大扉が開きました。
大扉が開くと容姿が似た人物が立っています。長身の銀髪の男性と小柄な銀髪の少女です。
王太子殿下から紹介があると拍手の音が大きくなり、人の声など聞こえないほどです。
私はチラリと隣を見上げます。
似た容姿のリカルド。その容姿はどう見ても帝国の皇族です。
「どうかされましたか?」
「いいえ。ただ、何故誰も気づかないのかと思いまして」
「普通は気が付きませんよ。さて、我々は下がりましょうか。今日は忙しいですよ」
そして、私はリカルドに手を取られ、会場を後にしたのでした。
*
「馬鹿殿下。その口を閉じてくださいませ!」
そして私は近衛騎士団長の屋敷から物的証拠を複製したものをランドルフ王子に渡したところで、いつもの悪ふざけが始まってしまいました。
こういうところが無ければいいですのに。
「それでは、私は下がらせていただきます」
私のやるべきことは終わったと、部屋から出て行こうとすると、再び引き止められてしまいました。
今度はレイモンドからです。
「待ってください。今日は忙しいといいましたよね」
確かに言われましたが、すでにパーティーは終わりましたので、後片付けでも命じられるのでしょうか?
「遠出をする準備をしてください」
「は?」
「あと、聖女マリー様へ挨拶に参ります」
「お母様に?」
何故母に挨拶をする必要があるのかわからず、首を傾げてしまいます。
意味がわからないという顔をしていますと、リカルドが跪き私の両手をとってきました。
「イーリア。私と結婚してくださいますか?」
「話が飛びすぎてわかりません!」
どこから結婚の話が出てきたのですか?私とリカルドの結婚はランドルフ王子とアリアお嬢様のあとと決められたではないですか!
「急で申し訳ありません。しかし、時は満ちたのです」
「何が『しかし』なのです!」
先程から何の話をしているのか、私はさっぱり理解できないのでした。




