第131話 死の水
「そもそも封印が解けるのが問題なのよ。死なないって大変よねぇ?」
邪神を踏みつけている母が怖いです。
「墓を作るから墓泥棒が暴きに来るのよ。隠されると暴きたくのが人の性だものね」
そのように言っている母は地面に向けて手を伸ばして何かをしています。地面が動いているのが怖いです。まるでそこから何かが出てきそうですわ。
「だから、墓守を置けばいいのよね。動力源はそう! このヘビ!」
『ギャァァァ!』
頭の代わりに出てきている複数いるいる内の一匹のヘビを掴み、地面に投げ捨てました。そう、地面が大きく盛り上がっているところにです。
その地面から出てくる手……手……手が出てきましたわ!
「お父様! アレはなんですか!」
知っていそうな父にしがみつきながら尋ねます。
「さぁ? なんだろうね?」
「知らないのですか!」
その間にヘビを掴んだ手は、そのまま地面から身体ごと出てきました。そして土でできた人はヘビを飲み込んだのです。
「どこの人か知りませんが、武装しているのだけど?」
土でできた人は、見たことのない土の鎧をまとい、剣も腰に差しています。
「始皇帝を見習おうと思ってね」
母が知らない人を見倣うとか言っていますが、どうみても良いようには見えません。
そして次々とヘビを引っこ抜いて土でできた人を作っていく母。
……なんだか既視感がありますわ。
「さぁ! そこに整列しなさい!」
母が命じるままに綺麗に整列する土の兵。
ここで『イエス・マム』と言えば、見慣れた光景になると思います。
おおよそ、百体の土の兵が邪神を足蹴にしている母の前に揃ったのでした。
「相変わらずマリーは、悪の女帝のようだね」
「あなた? それは褒めているのかしら?」
「もちろん、褒めているよ」
流石、母を押し付けられた父だけはあります。この状況に平然としていました。
それも悪の女帝は褒め言葉ではないと思います。
「兵ども、この雑魚をそこの石棺に詰めなさい」
ヘビが居なくなった巨大な邪神を、母の命じるまま何処かに移動していっている土の兵たち。
あら? あのような石の棺があったのですね。
そして恨み言を次々と言っている邪神を無視して、重そうな蓋が閉じられて行きます。
「さて、イーリア」
「はい」
私に何かをさせたい母に呼ばれたので、父に下ろしてもらい、地面の上に立ちました。
「死の水を作り出しなさい」




