第13話 バラの贈り物の付属品
「アルベント伯爵令嬢。少々こちらに来ていただけますか?」
「まぁ? 私はアリアお嬢様の侍女ですので、お嬢様のお側に控えておかねばなりません」
私の失言は笑顔で乗り切ったものの、やはり逃れられませんか。
今はアドラディオーネ公爵家の庭にある温室に来ています。冬でも花を楽しめるようにです。
「バラはないのか?」
「だから、このバラはイーリアが作ったものだと言ったわよ」
私達の前方では咲いたバラを探している第一王子とバラは咲いていないというお嬢様の言い合いになっています。
「母上がバラが好きなんだが、ご機嫌取りに毛虫入りで贈ってみようかと。毛虫って可愛いだろう?」
「馬鹿王子! それは嫌がらせですわ!」
「何故だ! ウゴウゴと動いて可愛いじゃないか!」
これは可愛いの基準が違います。それが嫌な女性がいることも教えないといけません。
「それよりも、ランドルフ王子殿下の言動を諌めるのが先ではありませんか?」
私は毛虫つきのバラを母親に贈ろうと画策している第一王子に視線を向けていいます。
「そうですね」
そう言ってサフィーロ伯爵は第一王子の元に行く。
「ランドルフ殿下。蛹もおつけするとよろしいかと」
「ヒィィィィィ!」
「リカルド! それはいい!」
お嬢様の悲鳴が!
どうして毛虫と蛹をセットにして喜ぶ女性がいるのですか! いいえ、一部の方は喜ぶかもしれません。
しかしバラの中に毛虫が入っていれば、バラを投げ捨てることになるでしょう。
私はお嬢様の元に駆けつけ、お嬢様を背にかばいながら、同じような思考を持つ二人を睨みつけます。
「バラを贈るならトゲを取って花と茎だけにして贈ってください! それが最低限のマナーです! それ以外の付属品は別途要相談です」
「毛虫は?」
「毒を持つモノが多いので却下です」
「蛹は?」
「却下です」
「何故だ! 蛹から羽化するところは見ものだぞ!」
「それはランドルフ王子殿下の好みであって、王妃様の好みではありませんよね? ランドルフ王子殿下はご自分の好みを押し付けるお子様ですか?それとも王妃様の好みを計れる王妃様の王子ですか?」
すると第一王子はふと考える素振りを見せました。
「確かに俺の好みだ」
ご理解いたたけたようで良かったです。
「イーリアとやら、だったらバラを用意しろ」
私は笑顔を浮かべます。
「それを命じるのは私にではなく、殿下の側仕えにです。私はアリアお嬢様の侍女ですから」
「いいじゃないか!」
「駄目です」
「俺が用意しろと言っている……イッ!」
「同じ歳とは思えないお子様さ。そんなお子様にはデコピンです」
私はこの状況にでもニコニコと笑みを浮かべている銀髪の青年を睨みつけます。
「貴方は誰の味方なのですか?」




