第128話 逆恨みということがわかりましたわ。
「封印されたデルピューネスは封印の隙間をぬって、人々の心を誘惑したと記述にはありますが、恐らく今回のように封印を解く者がいたのでしょう」
そもそも簡単に封印が解けるのが問題なのではないのでしょうか?
「人外の力とは魅力的に映るようですから」
確かに剣術を扱えない私は、父や姉を羨ましくありますが、姉からすれば母の魔法を使える私が羨ましかったらしいです。
「あの? 人にバレるような場所に封印するのが悪いのでは?」
「人は隠されると、見つけたくなるようですよ」
ああ、そういう匂いを嗅ぎ分けるのが、上手な方がいらっしゃるということですね。
「それにどうも、邪神の召喚術というものが確立されてしまったようで、きりが無いいたちごっこというのが現状ですね。それで、傭兵として我々が対処することが多くなったということです」
……傭兵として有名なレイム族に、邪神討伐をお願いするのですか?
でもそれって相当悪化してからに、なってそうですね。自分たちで対処できなくなったから、お願いするという流れのような気がします。
それで、邪神としてはいい感じのところで、毎回レイム族に邪魔されると……あれは逆恨みですわね。
「なんとなく、わかりましたわ」
「はい。ですから、まずはイグネア王国を我々の手中に収めるべく、偽物の第二王子には表舞台から去ってもらいましょう」
偽物というより、王族であることには変わりませんが。
ん? 『まずは……?』『我々の?』
「お兄様。正面から堂々と殴り込み。るーたん頑張る!」
はっ! 何処かに連行されたルシア様の声が背後から聞こえてきました。
確か、ゴテゴテとした貴族の服をまとって、一芝居したまま強制退場させられたはず!
後ろを振り向くと、メイド姿で両手に巨大武器を手にしたルシア様が立っていました。
流石に室内で、その武器はないと思います。
「ルシア。武器は今回は必要ないでしょう。ただし、ネズミ一匹も逃がしてはなりません」
「それは大丈夫。聖女様特性の虫を配置している」
「偉いですね。ルシア」
「えっへん」
話している内容を耳にしなければ、妹の頭を撫でて、褒めている兄の構図です。微笑ましい光景とは真逆の内容に、聞かなかったこととして、私は視線を正面に向けます。
リーネリア離宮。春には薔薇の庭園が離宮の周りを彩ると聞きますが、今は寒々しく葉の落ちた枝の隙間から見える建物に、華やかさなど見る陰もありません。
「さて、いきましょうか」
前回おサボりしたので、今日は3話投稿します。
18時ぐらいと20時ぐらいです。




