第127話 条件ですか?
「ドラギニアの名を名乗る条件はもちろんありますよ」
これはレイム族の中でも名乗れる者と名乗れない者がいるということですか。
「だいぶん、人の血が混じってしまった我々に残されたモノはコレですかね」
リカルド様はいつもしている白い手袋を外して、私に手を見せてきましたが、普通の出てす。
ただ父のように剣ダコがありません。
剣を使うはずなのに、どういうことかと首を傾げていると、その手が変化したのです。
青みかがった鱗をまとい、爪が凶器のように伸びたのです。
「うわっ! 凄いです!」
なにがどのように変化したのかわからず、思わずリカルド様の手を取って足を止めて観察してしまいます。
母が時々幻影をつかいますが、そんなものではなく、視覚と手で触る感じが同じです。
幻影は脳へ干渉されるので、気がつけば何かが違うという違和感に襲われるのです。しかしそれが全くありません。
「どう見ても本物です」
「怖くはないのですか?」
「え?」
何が怖いのでしょう?
ああ、爪が鋭いということですか?
「いいえ。怖くはないですよ」
私はニコリと笑みを浮かべていいます。
ということは、ドラギニアを名乗ったランドルフ王子もこのようにできると……あ!
「そう言えばルシア様に、力を使ったことを叱っておられましたが、ルシア様もあの時このような姿を取っていたのですか?」
武器屋での試し斬りの時のことです。私は気づくことはありませんでしたが、リカルド様がルシア様に対して力を使ったと叱っていました。
「あの時は、尻尾で重心のバランスを取っていたので、流石に目立つと叱りましたね」
尻尾! え? どこに尻尾が生えていたのです!
「見逃しました」
メイド姿でうろこに覆われた尻尾など……はっ! 何か言えない絵面が浮かんできましたので、慌てて消去します。
たぶん一部の方々には受けそうな気がします。
「尻尾。後で見せてもらいます」
するとクスクスという笑い声が耳に触れていきました。
「私は幸せ者ですね」
「え?」
「この姿を見せると悲鳴をあげて逃げられると聞きますからね」
そうなのですか? 私は凄いと思いました。
「本当にイーリアと出会えてよかったです」
そう言って私の目を覗き込む金色の瞳は、瞳孔が縦に伸び、人の瞳ではありませんでした。




