第122話 何故か怒られている
「雑魚のくせに、出てくるんじゃないわよ! こんな雑魚の所為で召喚されたのかと思うと、吐き気がするわ!」
「マリー。一応かたちがあるぐらいには留めないと封印ができないよー」
母がボコ殴りしていて、頭のヘビどもが散り散りに逃げていっています。それを父が一匹一匹剣で刺していっていますが、それも効率が悪そうですわ。
しかし邪神は王族ではないので、日頃の鬱憤を晴らすように、拳を振るっている母には近づきたくないので、距離をとりましょう。
しかし背中に壁があるように下がれません。おかしいですわね。
「イーリア。何故、勝手に飛び出して行ったのですかね?」
「うぇ?」
下がれないと思っていましたら、リカルド様が背後にいたようです。
「聞いていた話よりも呆気なかったな。流石イーリア。いい拳だ」
ボコ殴りされている邪神を見ながら、私に向って親指を立てるランドルフ王子。
「イーたん。すごっ! るーたんも見習いたい」
ルシア様。その危険物をしまってきてから近づいて来てくれますか? もしかして何気に気にっているのでしょうか?
「イーリア。私の質問に答えていませんが?」
「あ……あの。百回も殺すという話を聞いて、効率が悪そうだと思いまして……でも、母が邪神を殴り飛ばしたと言っていたので、母が教えてくれた正拳突きなら倒せるのだろうと思ったので試してみました」
はい。私の目にはもう抵抗する気力を失ったのか、全く動かなくなった邪神がいます。
その周りに聖水でしょうか? 水を撒き始める祖父。
逃げていったヘビどもを駆逐して本体の元にかき集めている父。
なんだか手慣れている感じがします。
「イーリア」
母と父の邪神の後始末の仕方を見学していたら、リカルド様の方に顔の向きを強制的に移動させられてしまいました。
うっ。目の前には何故か黒縁メガネを外したリカルド様がいます。あの、ですから、色変えの魔道具は私には効かないので、いつもと同じにしか見えませんよ。
「勝手に飛び出してイーリアに何かがあったらどうするのです」
「何もありませんでしたよ?」
「相手は、ドラギニアを滅亡まで追いやったデルピューネスですよ」
ん? 何か話が食い違っています。
邪神はドラギニアという者に恨みがあるようでした。
しかしリカルド様は、ドラギニアを滅亡させたと言っています。
そもそもドラギニアが何なのかいい加減に私に教えてくれませんか?




