第121話 正拳突き
「あれは、なにですか?」
マルメイヤー公爵だったモノに視線を向けながら尋ねます。
一言でいうと醜悪でしょうか。
頭部がなく頭の代わりに蠢く百匹はいるであろうヘビのようなものが生え、上半身は男性でしょうが、鱗が表面を覆っています。
そして下半身は足のように2つに別れているものの、ヘビの尾のようにうねっているのです。
人ではないことは確かです。見ようによっては、人になりそこねたヘビと言えばいいのでしょうか?
「邪神デルピューネスと呼ばれているものですね」
リカルド様が教えてくださいました。
そうですか、アレを母が殴ったのですか。
アレは流石に殴りたくないです。できれば、遠くから槍で突くぐらいにとどめておきたいです。
なんだか。呪われそうですもの。
『ドラギニア。どこまでも我の邪魔をする小賢しい奴らめ』
ランドルフ王子。呼ばれていますよ。挑発したのでしたら、きちんと後始末をつけてくださいよ。
それから私は母と共に傍観者になりたいので、離してくださいませんか? リカルド様。
「リカルド。あれは何回殺せばよかったんだ?」
なんですか? ランドルフ王子。今、おかしなことを口にしましたよね?
何回殺すとは、殺しても死なないと言っています?
「百の命があると言われているので、百回ほど殺せばいいのではないのですか?」
……もしかして頭の代わりに生えているヘビの数とかいいませんよね。
なんというか効率が悪すぎないでしょうか?
はっ! だからですか!
私は母の方に視線を向けます。
すると私は何も言っていないにも関わらず、母は頷いてくれました。
母の言っている意味がわかりました。
そう母は昔、幼い私に言いました。
『イーリア。これが正拳突きよ! これがあれば大抵のモノは倒せるの!』
私はリカルド様の腕を振り切り、邪神というモノに向って駆けていきます。
「イーリア!」
そして真正面にきたところで、構えをとり拳を握り、腰を回転させて拳を前に突き出します。
「『天誅!』」
醜悪な物体のみぞおちにヒット。
『ブボッ!』
変な奇声を上げながら横回転していく醜悪な物体。そして途中で二つに別れて飛んでいきました。
え! 拳なので斬ってはいませんよ。
よく見ると、一つは皮と骨だけの老人が床に横たわっています。
そしてもう一つは……
短編の宣伝です。
短編【四の五の言わず離婚届にサインをしてくれません?】
題名のそのままです。
興味があればよろしくお願いします。
https://ncode.syosetu.com/n0815kt/




