第120話 天に代わってお仕置きよ
「『テンチュー!!』」
『ぐぼっ!!』
私は、よくわからない物体になりかけているアルフレッド王子のお腹らしきところを殴りつけました。
あとで不敬だとか言われて捕まったりしませんわよね。
そして変な声を上げながら床をバウンドしていく怪しい物体。
なんだか、変な感触が拳に残っていますわ。
「イーリアよくやった! 誰かアルフレッドを典侍に見せてやってくれ!」
ランドルフ王子の言葉に足元を見ますと、金髪の少年が横たわっているではないですか!
あれ? では床を転がっていったのは何だったのですか?
「お父様。さっきの言葉は、なにだったのですか?」
振り返って父の方を見ますと、そこにはワインレッド色のドレスをみにまとった母が側に立っていました。
「天に代わってお仕置きよという意味よ」
謎のポーズを取りながら言う母。もしかして、その恥ずかしいポーズも必要とかいいませんわよね。
「殿下。わざとドラギニアの名を出しましたね。私は知りませんよ」
そして母はランドルフ王子に向って怪訝な表情を浮かべました。
ワザとだったということは、ここでは出すはずではなかったということですか?
「聖女マリー殿。招待客を移動させてくれたことには感謝する。これは我々が始末をつけることだからな。手出し無用でお願いしたい」
「元からそのつもりよ。本当にエリザベートは食えない女ね」
この件には王妃様の意志が絡んでいるのですか?
あの私も部外者の位置に移動していいでしょうか?
「イーたん最高! ばいんばいんって跳ねていっていた」
私がスススっとランドルフ王子から距離をとって、母のほうに向かおうとしたところで、ルシア様に声を掛けられてしまいました。
それも先日購入した巨大な斧と大剣を持っているではありませんか! 何故にヤル気満々なのですか!
「予想外ですが、結果としてこれで良かったのかもしれませんね」
「予想外なことになっているのですか!」
そのルシア様の隣にいるリカルド様に思わず突っ込んでしまいました。
どこからが予想外なのですか?
初めは予定通りだったのですよね?
「カトリーヌを娘だと素直に認めてくれたら、ここまでのことにはならなかったのになぁ」
「初めからではないですか!」
そんなことを口にするランドルフ王子に思わず詰め寄ります。そもそも、認めない流れを私に言っていたではないですか。
「素直に認めるような御仁ではないことは考慮済だ。それにアルフレッドを使ってくるのもだ。ここでアルフレッドを保護できたのは僥倖。流石イーリアだ」
「殿下。イーリアは私の婚約者ですからね」
あの……なんだか見慣れない物体がコチラを睨んでいるのですが、あれは何なのでしょうか?
それからリカルド様。いつの間に私を抱えていることになっているのか、理解不能なのですが?




