第118話 ここでドラギニアを名乗るのですか!
「相変わらずの馬鹿さ加減だ」
マルメイヤー公爵から見たランドルフ王子は馬鹿に見えるそうです。
はい、それは否定できません。
「正統とは言ったが、それは本当のことかな?」
「本当のことだ。私がこの国の王となることは決められている」
あの? ランドルフ王子が第一王子であり、アルフレッド王子が第二王子と呼ばれている時点で国王陛下は誰を次代にするか決められていません。
なのに、次の王となる言葉を口にすれば、このように会場内がざわめくのも当たり前。
そしていつの間にか、シレッと父は私の斜め前に立っていました。
「お父様。お母様のところにいなくてもいいのですか?」
コソコソと私は父に尋ねます。お父様の剣の腕を疑っているわけではなく、お母様の護衛はいいのかという話です。
「うん。イーリアの方が危険だからね」
「え?」
「再度封印したはずなのじゃが、どうやら解いてしまったらしいのぅ」
「え?」
父の反対側には、祖父が立っていました。
あの? 今の私ってそんなに危険なのですか?
「正統というのであれば、古来からこの地を治めていた者こそが、正統と名乗る権利があるのではないのか? アルフレッド」
馬鹿王子。どんな屁理屈を捏ねだしたのですか!
そもそもイグネア王国の前に国があったなんて、歴史にはありませんわよ。
「はっ! そんなことを言えば、この周りの国々が、そうと言えよう。だが、ここはイグネア王国だ。初代国王からの血を濃く受け継いだ私こそが正統なる王だ」
馬鹿王子もヤバいですが、老成したアルフレッド王子もヤバいです。
国王陛下が健在なのに、王と口にしてしまっています。
「そうかな? 私はドラギニアの名を受け継ぐ者。私こそが正統なる血族の王と言える」
え?
……え?
…………え?
「え――――!!」
ドラギニアが結局なにかわからなかったのですが、ランドルフ王子もドラギニアを名乗るのですか?
どういうことですか?
全く理解不能な展開になってきました。
「イーリア。声が大きいよ」
「何じゃ? 知らなかったのかのぅ?」
父も祖父も普通なのですが、これは一般常識の範囲とか言いませんわよね。
それでドラギニアってなんですの〜?




