第10話 悪役が板についていると思っていたら
「雪ん子みたいで可愛いな。アリア」
「それ褒め言葉じゃないと理解していないでしょう! いつも言っているけど、貴方の馬鹿さ加減には辟易しますわ!」
お嬢様。悪役令嬢の役柄が二週間で定着したと思っていましたら、普通に第一王子に対して悪役令嬢をしていますよ。
それに王子に向かって、馬鹿と普通は言えません。
そして、アドラディオーネ公爵もアリアお嬢様の態度に注意をしないということは、これがいつもの光景だと言っているようなものです。
私が知っているお嬢様はわがままや悪口をいうような方ではないということは、第一王子限定ということですか。
チラチラとお嬢様は私の方に視線を向けてきます。もう、そのままプランEで行ってください。
私はまぶたを閉じて、お嬢様の意思をそのまま伝えるように示します。
プランEはお嬢様の言葉で第一王子に婚約者になるのは嫌だと伝えることです。
これは王族に歯向かう行為ですので、勧めることはできなかったのですが、血筋的には従兄妹にあたるお二人であれば、ある程度であれば許されるだろうというギリギリプランです。
このプランEは馬鹿王子が演技であった場合を考慮したプランです。しかしお嬢様はあり得ない言われましたので、破棄プランでした。
しかし、このプランで行くしかありません。ステータス的には馬鹿王子となるデータはないのです。
あと残るは王子の性格が馬鹿か。馬鹿を演じているかです。
「そもそも、どうしてわたくしが、ランドルフ殿下と婚約しなければなりませんの!わたくしは馬鹿は嫌いだと何度も言っていますわよね!」
お嬢様! 最後の馬鹿は嫌いというところは必要なかったのではないのですか?
「うん。アリアはズバッと俺に言ってくれるからな。その方が楽しいだろう?」
「意味がわかりませんわ!」
「そういうところだな」
第一王子はそう言いながら笑っています。これはお嬢様が敵う相手ではありません。お嬢様の言う馬鹿というのはおそらく、レディとしての扱いがなっていないということだと、私は推察しました。
サロンに入ってからの第一王子の行動と言動を確認していますが、何も問題はありません。いいえ、お嬢様を雪ん子と例えたのは問題ですが、これはお嬢様がレディの扱いを叩き込めばなんとかなるかもしれません。
そして己の隣に立つ者は、気兼ね無く意見を言ってくれる存在がいいということです。
ここ三ヶ月だけですが、アリアお嬢様についていてわかりましたが、お嬢様は努力家です。できないということを口にされることを嫌い、勉強をされています。
しかし、それを他人には見せることはありません。できて当たり前だという顔をするのです。
正に王妃の気質を持っているのです。
ランドルフ第一王子は目の付け所がよかったということですわ。




