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印象の変化


唖然とした。初対面でクソ女?

聞き間違い?


言い返そうと口を開いた時にはノアはゼミ室に入っていた。


何あれ?!かっこよかったらなんでも許されるの?

口が悪いとは聞いていたが、彼自身には何もしていないのに、こんなことを言われるなんて。


歯噛みして、後ろ姿を見つめていると

「ごめんね、弟が」

「いやいや、お兄さんはなにも」


そういうと、彼がふふっと笑った。

「お兄さんってなんか変な感じだね」

「あっ、すいません。えっと」

たしかに初対面の先輩にお兄さんは変だったかも。


つい噂のせいでノアのお兄さんという印象が強かった。

名前を言おうとしたがわからない。


それを察して、自己紹介してくれる。

「リアム。よろしくね」

にこりと優しく微笑んでくれた。

なんてスマートなんだ。


「こちらこそよろしくお願いします!」

ぺこりと頭を下げる。

「ノアのことはあとで叱っとくから。あいつ、本当は優しいやつなんだよ。これからぜひ仲良くしてやってね」


リアムさんがノアに目線をやる。

優しい…?

リアムさんの視線に気づいたノアが戻ってくる。


「いつまでそこで話してるんだ。入れよ」

「偉そうに!あんたも新入生でしょ!」

思わずノアに噛み付くと、ノアが目をぱちくりさせる。


「あはは!いいね!どんどん言ってやって!」

リアムさんが弾けるように笑った。

「あっ、いや、とっさに。すいません」

しまった。お兄さんの目の前で弟にいきなり偉そうに注意してしまった。


するとリアムさんは楽しそうに手を振る。

「謝らないで。ノアに注意する子なんて、なかなかいないからさ。むしろありがたいよ」


気まずさに視線を泳がせるが、リアムさんは楽しそうに笑っている。

リアムさんの大人な優しい笑顔も素敵だったけど、今の茶目っ気のある笑顔も可愛らしくて素敵。


あまりにリアムさんが笑うから、照れくさくなってもじもじする。

するとノアが不貞腐れたような顔をして、私を軽く睨んで部屋に入っていった。



懐かしい…初めて会った時は仲良くなれそうにもなかった。

すやすやと私の肩に頭をのせたまま寝ているノアの寝顔を見て思う。


「どうなることかと思ったけど、俺たち結局4人でこうやってゼミ以外でも集まるし、仲良しだよな」

イーサンが笑う。

「だんだんノアの棘もなくなったしね。他のゼミより仲良しなぐらいよ」


1回生4人の合同研究や合宿を通して、この半年でずいぶん4人の仲が深まった。

気づけばこうしてゼミ以外の時間も共有するようになっていた。


「でも結局ノアってリリアーナに一番気を許しているっていうか、懐いているよね」

「俺もそう思う」


ユーリとイーサンの言葉に目を丸くする。

「えぇ?懐いている?そんなことないでしょ。むしろリアムさんに近づく変な虫扱いだよ」


初対面であっさり私はリアムさんに惚れてしまった。

そしてその後、面倒見が良くて優しいリアムさんにますます恋心を募らせた。


そのためゼミではリアムさんの周りをちょろちょろしている。

そうしてリアムさんにまとわりついていると、ノアはいつも間に割り込んでくる。


「でもきっとそれはリリアーナが傷つかないためもあると思うし。そういうところが懐いているように見えるけどね」

「わかっているよ」

ユーリが気遣うように私を見つめる。


分かっている。

私の恋は成就しない。


ノアは私が要らぬ夢を見ないように、お兄さんの邪魔をしないように、間に割り込む。



リアムさんには恋人がいるから。



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