友達
解毒剤ができた翌日。
「というわけで、解毒剤が完成しました。いろいろありがとうね」
ゼミ室にユーリとイーサンと集まって、昨日の動画を見せつつ、報告する。
惚れ薬を飲んだ自分を見られるのは恥ずかしいが、ノアの姿は見せたのに、自分は見せないのは卑怯だ。
ノアにも許可を取り、二人に見せた。
「なんか恋愛映画でも見た気分だ」
イーサンが困ったように頭をかく。
「うっ、お見苦しいものを」
ぺこりと頭を下げる。
「いや。二人とも素直になったらこんな感じかと」
「素直…」
イーサンの言葉を繰り返す。
「この惚れ薬って偽物の好きが生まれるというより、自分の中にある感情が出るものなのかな」
昨日考えていたことを口に出す。
「そうかもしれないね。私の時とは少し違う気がする。私の時はあくまで友達としての好きが全面に出ている感じだったけど」
映像を見ていたユーリもうなずく。
「で、でもそうしたら私、ノアにキスしたいとか。まるで恋愛的に好き、みたいな…!」
動揺して頭を振る。
自分でも気付かぬうちにノアのこと好きになっていたの?
「私はリアムさんを好きなはずで。まさか二人とも好きだったの?!それとも男の人なら誰でも?!」
混乱する。
ノアのことはゼミ仲間としては好きだ。
口喧嘩は多いけど、今はノアの優しさだっていいところだって知っている。
でも私の好きな人は。憧れの人はリアムさんのはずなのに。
恋人がいるのに惚れ薬を作ってしまうくらい。
「うーん。リリアーナの気持ちはリリアーナにしかわからないけど。俺はお似合いなのはノアとリリアーナだとずっと思っていた」
イーサンが私の目を見つめる。
「私も。リリアーナがリアムさんに憧れているのはわかっていたけど。ノアといる時の方がリリアーナらしいというか。自然体でいいなとは思っていたよ」
ユーリにまでそう言われ、私は口をパクパクさせた。
「でも大事なのは結局本人の気持ちだけどね」
それはそうだ。
いくらお似合いって言われてもノアが私のこと好きじゃないと…
ってだからなんで私は自分はいい前提で、ノアの気持ちを気にしているの。
再びぶんぶん頭を振る。
「で、ノアは解毒剤飲んで治ったの?」
ユーリの問いかけに頭を振るのをやめて答える。
「それが今晩でいいって、まだ飲んでいない」
「なんで?惚れ薬の効果が残っていようがいまいが、ノアだってはやくはっきりさせたいでしょう」
ユーリが首を傾げる。
「今日は私にとって大事な日だから、それが全部片付いてからでいいって」
「大事な日?」
「リアムさんがゼミに顔を出すのが最後なの。だから告白しようと…」
今日が最後のチャンスだ。
ユーリとイーサンが顔を見合わせて、目を見開く。
「振られるのは分かっているんだけどね。区切りっていうか、前を向くために」
しかし、こんな中途半端な気持ちで告白してよいのだろうか。
正直なところ、今はリアムさんよりノアのことで頭がいっぱいだ。
でもノアも背中を押してくれたのだ。
「きっぱり振られてくるよ。変な未練残さないように、この半年の気持ちに決着つけてくる」
ユーリとイーサンを順に見つめてうなずくと、二人が私を抱きしめた。




