完成した薬
夜も更けてきて、そろそろ寝ようかという頃。
「できた!」
透き通った青色の液体を光にかざす。
「解毒剤できたのか?」
ノアが私の手元を覗き込む。
「うん!ついに!」
ノアが惚れ薬を飲んで6日目。
ようやくお目当てのものが完成した。
さっそく試したい。
「今からまず惚れ薬飲んで試してもいい?」
今は自分の家にノアと二人きりなので、周りに迷惑をかけることはない。
惚れ薬を飲んだ日からノアは学校以外の時間を私の家で過ごしている。
この生活にはやくも慣れて違和感ない自分に少し驚いている。
ノアが正常になって、家に来なくなったら寂しいかも。
頭をよぎった考えに首を振る。
自分は迷惑をかけている立場なのに、何を言っているのか。
「ああ。試そう」
ノアがうなずいたので、前に作った残りの惚れ薬を棚から取り出す。
「記憶なくなっちゃうから、映像撮っておいてもいい?」
前にユーリが使っていたのと同じ小型の記録魔法機を取り出す。
ノアの了承を得て、録画を始める。
「じゃあ飲むね」
小瓶を逆さにし、自分の口に含む。
甘い味が広がる。
視界の端に入ったノアが微かに息をのんだ気がした。
ごくりと全て飲み込む。
うつむいて目を閉じ、ゆっくり時間を刻む。
そして顔をあげると、心配そうにこちらを見るノアの薄紫の瞳としっかり目が合う。
体が熱っててきて、目が潤み出す。
「…ノア」
自分の口から出た声はびっくりするくらい甘い声だった。
ノアの喉仏が上下する。
その動きすら色気を感じる。
ああ、ノアってなんて魅力的なの。
吸い寄せられるようにノアに近づく。
「リリアーナ…」
ノアの緊張したような声で名を呼ばれ、私は震えた。
好きな人に名前を呼ばれる。
それだけでこんなに胸が熱くなるなんて。
私の名を紡いだノアの薄い形のよい唇を眺める。
血色もよくて、美味しそう。
ノアの肩に手を置き、背伸びをする。
そしてノアの美しい顔に、自分の顔を近づける。
「おい」
焦ったようなノアの声が聞こえたが、おかまいなしに近づき、あと5センチで唇が触れ合う距離になった。
ノアの息が自分に当たり、私はとろけそうになる。
すっと最後の距離を縮めた。




