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3.マンボウ毎秒


ルミウスは戦闘態勢のために剣をすぐさま構えたが、腰が入っていない。今にも眠ってしまいそうだ。


「そうかお前が勇者ルミウスか……まあ待て、俺は今日は戦いに来たわけではない。ちょっとばかり挨拶に来ただけだ。俺はマンボウ家次男のマン次郎だ。勇者よ、なぜ眠れないのか知りたくなはいのか?」


ルミウスの目の色が死んだ目から少しだけ色が戻る。

「眠れない理由、お前が知ってるのか……?早く教えろ!!!」


「だから待てと言ってるだろうに……。そうだな、まず家から鳴る音の話からだ。あれは我らがマンボウ兄弟の一派である対勇者穏健派が行った嫌がらせの一貫だ」


「兄弟の一派の対勇者……穏健派?確かに、マンボウは子供が俺を倒すと言っていたが、それがコレか?」


マン次郎は爆ぜたマンボウに目を向ける。


「そうだ、まずそこに爆ぜているのが長男のマン太郎だ。長男としてカッコつけたかったから特攻など無茶をしたのだろう。それにマン太郎兄は対勇者特攻派のリーダーだったからな。派閥については、兄弟の数が多いゆえに方針の違いがでるのだ。しかし勇者を倒すという部分では皆一致している。今後も様々な方法でお前を殺そうとするだろう」


「なら一斉に俺に襲いかかればいいだろう!なんで一斉に来ないんだ!」


「だから兄弟の数が多いと言ってるだろう!頭の悪い奴め」


「10人でも100人でも相手になってやる!だから早く全員連れてこい!俺は早く寝たいんだ!!!」


「だから兄弟が多いのだ。勇者を倒した子供が次の魔王になると決まったのだ。全員で来たらだれが倒したか分からないだろう!」


「なら一人づつでいいから、はやく全員と戦わせろ!」


「そう!俺はその話をしに来た!今から毎日お前に挑戦するマンボウの子が現れる!」


「そういうことか……わかったぜ……毎日一匹づつ戦えってことだな!いいぞ!相手になってやるよ!もっともあんな雑魚の子供なんか怖くはないがなぁ!?」


「だれが毎日一匹と言った……我が兄弟は3億匹の兄弟ぞ。勇者と言えども3億日も生きられないだろう」


「…………………………へ?………………3億?」


「そうだ。ところで勇者よ……10年は何秒か知っているか?」


「えーっと、1分が60秒で1時間が………………分かった!10年は3億1536万秒だ!」


「そう正解だ。3億1536万秒。我らにも寿命がある。だから10年以内に決着をつける方法を考えた。我ら兄弟姉妹一同は1秒に一匹づつ貴様に挑むことになった。そして勇者を倒した者が次の魔王になる」


「1秒に一回……」


ルミウスは隣で爆ぜたマンボウを見た。


これが1秒に1回。


無理だ。


絶対ムリだ。


勇者の目が死んだ色に変わる。


「ちょっと、そんなのおかしいでしょ!?もうちょっと何かあるでしょ!両者が万全な状態で戦うとか、正々堂々とかあるでしょ!?」


「決まったことだ。仕方がない。我、マン次郎は後見人として見届ける故、魔王になることを辞退した。そして勇者お前にはマンボウの子供に殺されると知っておいてほしかった。知らずに死んでも、母がうかばれないからな」


3人は言葉を失っていた。何か解決策はないのだろうか。しかしマン次郎は帰ろうとする。


「なに、全員が星のように降ってくるわけではない。せいぜいあがいてみろ。では、我は帰る」


そう言ってマン次郎は帰っていった。



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



そして、一週間後



ルミウス、ミエル、マリエは交代でマンボウを追い払っていた。


マン太郎のように突撃してくるヤツ。


水をかけてくるだけのヤツ。


小石を投げてくるだけのヤツ。


マンボウにも色々いた。手のひらサイズのヤツからルミウスよりも大きなやつ。それが毎秒毎秒、なにかしらの攻撃をしてくる。


マリエとミエルは交代できるから睡眠がとれていた。しかし、ルミウスは勢いよく突撃してくるヤツもいるので、未だに眠れずにいた。


「……マリエ……もう10年たったか?……俺ももうおじさんになってしまったな……」


「しっかりしてルミウス!まだ一週間しか経ってないですわよ!」


王都の自宅にいてもマンボウの亡骸が積み上がるので、王都も追い出され、街道をそれた場所でマンボウをさばいていた。


「でもこれではジリ貧よ。なんとかしないと……」


「そうか、死ねば眠れるんだな。なんで気が付かなかったのだろう」


「だめ~!」


ルミウスは限界を超えていた。眠いとかそんな感覚もない。もう考える事も放棄していた。


「マンボウ様、マンボウ様は神。そうか……俺はマンボウになるために生まれたんだ。だから……マンボ!」


勇者の体はすでにマンボウの子を倒そうともしていない。考える前に、剣で切っている。マンボウが現れては切る。それを繰り返す。突撃してきたら剣を構え切る。水魔法を使ってきたら、魔法ごと切る。石を投げてきたら、その石を跳ね返して爆散させる。


戦闘ではなく蹂躙。勇者に負ける気配はない。しかし、勇者が生きているようには見えなかった。


「だめよこれは……何か……何か打開策がなければ」


「そうですわね……もう私も限界が近いですわ……」




ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー




一ヶ月後


「ああ。あああああ。………………………………ああああアアアアアアアア!

マンボウ様、アナタはなんと美しい。私が、私が間違っていたのだ…………」


マリエとミエルは別の方法でマンボウの子どもに対処しようと調べている。ルミウスはオートモードのようにマンボウを切り続けられることを二人は発見した。だから勇者は今一人、森の奥で戦っている。


「マンボウ、マンボウ、マンボウ。ああ、愛おしい……眠い?私はなぜ眠ろうとしたのだ?」


そう言って、頭を木にぶつけながらもマンボウは次々と切られている。


「そうか……分かったぞ!人生の意味が!」


勇者の目に色が戻る。するとおもむろに今切り捨てたマンボウの頭の中身をくり抜いて、頭にかぶった。まるでさか○クンのようだ。


「私がマンボウとなればいいのだ。



――お母さんですよ~」


そう言ってマンボウを毎秒切り捨てる。


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