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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第五章 『新生活』
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第四十三話 『非日常』

「オハヨウ......」


 テスト当日。

 哉の顔がげっそりしていた。

 なぜか。


 あの日だけでは不安だったので、俺と牧田で特別訓練をしたのだ。

 特に数学ができないこいつに、無理矢理公式をねじ込んだのだ。

 そりゃあげっそりもするだろう。

 なんだか見ていてかわいそうだ。


 まず声に元気がないのだ。

 あの年中無休で元気な哉が、元気を失っているのだ。

 これは大事件だ。

 大問題だ。

 犯人は誰だ。


 俺です。

 俺たちです。

 悪気があった訳じゃないんです。


 とまぁ、冗談はこれくらいにしておこう。


「おはよう

 随分とげっそりしてるけど大丈夫か?」

「誰のせいだと思っているんだ」


 ごもっともでございます。

 まぁ元をたどるとお前のせいだ。


「で、でもまぁ

 多分テストは大丈夫だよ」

「......」


 本当に大丈夫だろうか。

 テスト中に倒れたりしないよな。

 こいつ、倒れるどころかぽっくり逝きそうな顔してるんだが。


 ま、まぁ、大丈夫だろう。

 人はそんなに簡単には死なない、と思う。

 人は簡単には死なないなんて、16歳で一度死んだ俺が言ったところで説得力なんてあるのだろうか。

 いや、むしろ経験者は語るってやつだろうか。


 そんなのはどうでもいい。


「頑張れよ」


 苦笑いでそう言った俺に、哉は死んだ顔で親指を立てた。


「おうよ......」


 ホント元気ないな、あいつ。



 ---



「ありがとぉー!!」


 数日にわたる中間テストが終わった直後。

 元気いっぱいで俺に近づいてきたのは哉だ。


 数日前、テスト直前の彼からは想像もできないような変貌ぶりである。

 しかしまぁ、これが哉だ。

 彼は、通常運転にようやっと戻った。


 テスト中の彼は酷いものだった。

 今日にでも世界が終わりそうな顔だったのだ。


 それが終わった途端にこうだ。

 随分と、切り替えの早い奴だな。


 というより、ありがとうってなんだ?

 何に感謝しているんだ?

 テストが終わったことに対してか?

 それなら感謝することじゃないだろ。


 受けたかろうが受けたくなかろうが、勝手に始まって勝手に終わるのがテスト。

 俺たち生徒の都合などお構いなしなのだ。

 そんなものに、感謝するなんておかしなことだと思う。


「俺、こんなに数学が解けたのは生まれて初めてだよ

 これもお前らのおかげだ!

 ありがとな」


 どうやら俺の勘違い。

 感謝の対象はテストではなく、俺たちだったようだ。


 俺に感謝を述べた哉は、抱きついてくる。


「やめろ、離れろ

 暑いだろ」


 近いし、暑いし、恥ずかしいし。

 クラスのみんなが見てるんだぞ。

 どうしてこいつはこんなことが平然とできるんだ。

 早く離れてくれ。

 頼む。


「嫌だ、俺は離れないぞ」


 いや、離れろよ。


「おい、小夏

 見てないで助けろ」


 俺は一連の流れを見守っていた遠坂姉に助けを求める。

 ヘルプミー

 私を助けて。


「あんたも抱きつけばいいじゃない

 一部の女子には需要があると思うわよ」


 遠坂姉は、悪い笑みを浮かべる。


 いや、助けて欲しいんですけど。

 なんだよ、需要って。

 俺はこんな需要、供給したくなんてない。

 助けてくれ。


 おかずになんてされたくない。

 やめてくれぇ


「おい、離れろ」

「ああ」


 どうやら哉も落ち着いてきたようだ。


「次はリンだな」

「ちょっと待て」


 次とかじゃないだろ。

 抱き着くのをやめろよ。

 牧田と哉とか、それこそ噂になるだろ。

 需要曲線最大値だよ。


「なんだよ待てって」


 でも、よくよく考えてみればあれだな。

 こいつを止める意味はなかったな。


「いや、何でもない」


 俺も少し、噂になっているリンカヅを見てみたくなってきた。

 悪いな。

 裏切った訳じゃないんだ。



 哉は三組へと、駆けて行った。


「私も見て来ようかしら」


 と、遠坂姉。


「お前、そういう趣味だったのか」

「ちょっとだけね。悪い?」


 遠坂姉は、これでもかというような鋭い目で俺を見てくる。

 そんなに睨まなくてもいいじゃないですか。

 威圧感が半端ないですよ。


「悪くないです」


 なんだか殺されそうだったので、とっさにその言葉が出た。

 まぁ実際、悪くない。

 趣味は人それぞれだからな。


「でしょ?

 あんただってロリコンだしね」

「そうだ。悪くない

 俺もロリコンだしな......

 ん?」


 ロリコン?

 いや、俺はロリコンじゃないぞ。

 ロリは嫌いじゃないが、コンプレックスではない。

 嫌いではないが。


「俺はロリコンじゃないぞ!」


 誤解は解かなければ。

 こいつの中で俺の印象はどうなっているんだろうか。

 かなり酷い俺が出来上がってそうだ。


「街中で見た目幼女を気障ったらしく助けてくる汚い男。

 それのどこがロリコンじゃないのよ?」


 それ、俺と遠坂姉のことを言っているのか?

 確かに初めて会った時は、こいつのことをロリだと思っていたが。

 でも困ってそうだったし、普通は助けるだろ。

 まぁ、結果的には俺が助けてもらう形になったけど。

 なんか、ダサいな。


「お前今、自分の容姿が幼いこと認めたよな?」

「黙りなさい。殺すわよ」


 理不尽だ。


「自分では認めてるわよ

 認めてるから嫌なの

 自分で言うのは良いけど、人に言われると腹が立つの」

「あー

 まぁ、分からんくもないな」


 俺も、自分で変態と言うのは良いが他の人に言われるのは嫌だからな。


「じゃぁ、見てくるわ」

「おうよ

 行ってこい!」


 悪いな、牧田・哉。

 俺は遠坂側に着くよ。

 噂にされても達者でな。



 結論、そんなに噂にはならなかった。

 が、人気の組み合わせにはなったそうだ。



 ---



 てなわけで、いろいろあって放課後。

 テスト期間の間休みにしていた部活が、数日ぶりに再開した。


 ちなみに、この部活に欠席はあり得ない。

 別に、強制しているわけではない。

 なぜか、自然に全員集まるのだ。

 暇なのだろうか。


 ほぼ活動していない部活動に、無欠席で参加する部員。

 なんだかすごいな。

 皆勤賞だ。

 とは言っても、部活を作ってからまだ数週間しか経ってないんだがな。



 よし、こうして無事に全員集まったということで、この部活が始まって以来初めての部活動だ。

 実験をしよう。


「明蓮寺、前に言っていた実験をするぞ」


 実験開始だ。

 とりあえず、明蓮寺に協力を仰ぐ。

 この実験は、この部活ないでは明蓮寺しかできないのだ。


「いいですけど、どんな実験なんですか?」


 まぁ、そこは気になるわな。


「能力者の元に生まれる子は必ず能力者になるのかどうか、という実験だ」


 前にも言ったが、これはいくつかの文献からくる実験だ。


 一つは、能力者の両親から生まれる子供は能力者であるという文献。

 二つは、無能力者の中には自分の能力に気付いていないだけの人も混ざっているという文献。

 三つは、歴代の最強にまつわる文献。


 三つ目の文献には、今までの最強が上から順に書かれているページがあった。

 その内容はこうだ。


『 歴代最強(北方神国)


      ~~~

 ・1617~1622「無禄(むろく) 銀蔵(ぎんぞう)

 ・1622~1650「明蓮寺 (ごう)

      ~~~

 ・1799~1805「樫谷(かしや) 友也(ともや)

 ・1806~1811「水戸(みと) 久美(くみ)

 ・1811~1815「霧灯(むとう) 加持(かじ)

 ・1815~1817「明蓮寺 玄勢(げんせい)

 ・1817~1818「佐ノ木(さのき) (りく)」』


 これを見たのは最近だ。

 最近も最近。

 明蓮寺家に行った時よりも最近。

 テスト勉強の息抜きに読んだ本に書いてあったことなのだ。


 俺はこれを読んだとき、明蓮寺家の方針の理由が少しだけ分かった気がした。

 『明蓮寺』の名前が、二度も出てくるのだ。

 能力主義はそのせいだろう。

 いや、能力主義だから『明蓮寺』が二度も出てくるのか?

 まぁそこはどっちでもいいや。


 しかもこれなら、明蓮寺家があんな広い家に住んでいるのも納得できる。

 最強というのは、聞くところによると儲かるらしい。

 いや、儲かるなんてもんじゃない。

 がっぽがぽだ。

 なんたって、この世界で二番目に収入がいいからな。

 一位は神様だ。


 そんな職に、一家で二人も就いていたんだ。

 そりゃあ、住む家も大きくなるだろう。



 でだ。

 俺が言いたいのはそれじゃない。

 俺が言いたいのは、他二つの文献が正しいのであれば、明蓮寺は能力者である可能性が高いのだ。


 もしもこの実験で明蓮寺に能力があることが分かれば、父親の態度も多少は変わるかもしれない。

 それに文献の確認ができて、部活動をしたという実績も得られる。

 一石二鳥ってやつだ。


「ちょ、ちょっといきなりですね

 で、でも、大歓迎......です」


 いつも堂々としている明蓮寺が、なぜか恥ずかしそうにしていた。

 何が大歓迎なんだ?

 明蓮寺の言葉に疑問を覚え、他の奴らを見てみる。


 すると、他の皆もそれぞれ不思議な顔をしていた。

 遠坂姉は、いつも通りの軽蔑の眼差し。

 妹さんは、かわいく絶望したような顔。

 哉は、ニヤニヤと。


 なんなんだ、こいつら。


「だ、大歓迎なんですけど、流石にここではまずいので場所を変えましょう

 わ、私の希望は......先輩の家、とか」


 明蓮寺は、もじもじしながらそう言った。

 なんだなんだ。

 トイレにでも行きたいのか?

 漏らす前に行った方がいいぞ。


「サイテー」


 遠坂姉はそう言った。

 なんというか、棒読みで。

 言葉に感情がこもってない。

 それは、つい口からこぼれだしてしまった本音のようだった。

 いや、「のよう」ではない。

 本音なのだろう。


 なんでこいつこんなに怒ってんの?


「ま、まずは一人目、とゆうことですよね

 恥ずかしいですけど頑張ります」


 あー。

 そういうことか。

 俺の言い方が悪かった。


 明蓮寺の言葉を聞いた俺は、大きなミスに気付いた。

 俺のあの言い方、「能力者の元に生まれる子は必ず能力者になるのかどうか」なんて、明蓮寺なら誤解しかねない。

 遠回しに、「お前との子供を作りたい」と言っているように聞こえなくもない。


 きっと遠坂姉妹も、明蓮寺の誤解に影響されて瓦解したのだろう。

 はぁ......

 誤解ってのは困ったもんだ。

 面倒臭いことこの上ない。


「誤解だ

 俺が今からしようとしているのは決していかがわしい実験じゃない

 ちゃんとした、まじめな実験だ

 これは明蓮寺にしかできないことなんだ」


 妹の誤解を解くのは簡単だが、姉の誤解を解くのは骨が折れそうだ。

 そんな気がする。


「そりゃあ、あんたなんかのモノを欲しがるのなんて彼女くらいでしょうね

 穂香ちゃんにしかできないわ」


 ほらな、めんどくさい。

 どうせ一言挟んでくると思ったよ。


「いかがわしくないって言っただろ」


 俺は呆れ顔でそう言う。

 これに呆れずして何に呆れると言うんだ。

 なぜ俺の言い分を素直に聞いてくれない。


「でも、今はいかがわしくなくても大丈夫です

 『お前しかいない』なんてこと情熱的に言われたんです

 もう結婚は確定したようなもんですよね

 その時が来たら、よろしくお願いします」


 へー

 こいつにはそうやって聞こえる訳ね。

 都合のいい耳してやがる。

 何が「よろしくお願いします」だよ。

 お断りだ。


「......じゃぁ、実験に取り掛かろうか」


 俺は明蓮寺の言葉を無視して、実験を始めようとする。


 実験を始めるにあたって、まずはある道具が必要だ。

 俺は自分の鞄から、ある物を取り出す。


 それは魔道具だ。

 銃の形をした魔道具。

 本来なら、空気中の魔力(マナ)を凝縮し、弾として発射するのだ。

 要は、弾数無限。

 まぁその分威力は半減で、弾は当たった瞬間に散るのだが。


 と、俺はそんな魔道具を鞄からおもむろに取り出す。

 がしかし、俺の行動を見た一堂は震え上がった。

 いや、正確には俺の行動ではなく俺が取り出した魔法具を見てだが。


「お、お前、それで何する気だ」

「あなた、穂香ちゃんを殺す気?」

「せんぱい......」


 そんな人殺しを見るみたいな目で見やがって。


「か、翔琉先輩がどうしてもって言うなら......私、頑張ります!!」


 明蓮寺は、何か吹っ切れたようにそう言った。

 皆怖がっている。

 それに比べてこいつは、体張り過ぎだろ。

 まぁ、別に取って食おうなんざ考えてないけど。


「安心しろ

 これは改造して、何の威力もない

 ただ魔力が出るだけの、おんぼろ魔道具だ」


 俺はそう言い、手に持っている魔道具をみんなに見せる。


「......」


 まぁ、これだけじゃ信じないだろうな。

 普通なら、これだけの説明で恐怖心は収まらないだろうな。


 てなわけで、実際にやって見せよう。

 銃口を俺の腕に押し付ける。


「ちょっ、やめなさい」


 俺は、遠坂姉の忠告を無視してトリガーを引く。

 忠告してくれるのはありがたいが、この銃の攻撃力が無くなっているのは既に実証済み。

 俺としては怖がることがはないのだ。


 トリガーを引くと、銃が『シュンッ!』という音を立てる。

 だが特に何も起きない。

 そりゃそうだろう。

 この銃からは魔力しか出ていないわけだし。


「これなら信じられるだろ

 この銃の攻撃力はゼロだ」


 俺が目の前で実証したことにより信用してくれたのか、後ずさっていたみんなが少しづつ俺の方へと寄って来た。


「で、それで何するんだ?」


 まぁ、当然の質問だわな。


「能力っていうのは、空気中の魔力を使って発動しているってのは、体育の授業で聞いたよな?」

「そうだっけか?」


 とは哉の言葉だ。

 それに遠坂姉も、理解してなさそうな顔をしている。


「......そうなんだよ

 でだ」


 俺は話を続ける。


「この改造した魔道具で、魔力を無理矢理流し込む

 それによって、強制的に能力を使わせようってわけだ

 それで能力が何かを知る

 俺が呼んだ本によると、自分の能力に気づくことが能力を使えるようになるトリガーらしいからな

 これで明蓮寺が能力を使えるようになれば、『能力者の元に生まれる子は必ず能力者になる』という可能性が高くなるだろ?」


 と、少し長くなったが、俺は簡単に実験の説明をする。

 遠坂妹と明蓮寺は理解しているようだ。

 他の二人は知らない。


「なら、翔琉先輩が私の初めてを貰ってくれると言う訳ですね」

「......」


 物は言いようだな。


 俺は思わず呆れ顔になってしまう。

 よくもまぁ、こんなにすらすらと思いつくもんだ。


「何か面白そうなことしてるね」


 そう言って現れたのは牧田だった。


「君たちが部活動っぽいことをするなんて珍しい

 見て行ってもいいかい?」


 話を続ける牧田は、ニコッと爽やか笑顔だ。


「いいぞ」


 俺が短く答えると、牧田は「ありがとう」と嬉しそうな顔をした。

 クソ、イケメンめ。

 その顔、ちょっとでいいから分けてくれよ。

 「僕の顔をお食べ」みたいな感じで。

 いや、食べたくはないな。

 吸収して俺のものにしたい。


 ふと牧田の目を見ると、右目だけが黄金色に輝いていた。

 あのモードの牧田、久しぶりに見たな。


「それじゃあ行くぞ、明蓮寺」

「はい、行きましょう」


 随分と勇ましい明蓮寺だ。

 どこか嬉しそうな彼女。

 自分の能力を知れる可能性があるというのが楽しみなんだろう。

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