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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第二章 『神国』
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第四話 『汚れた男』

 澄みきった空の下。

 過半数が武装した通行人に紛れて歩き続ける汚れた男。

 汚れたといっても、服装だけだ。

 泥がついていてボロボロの服。

 腰に巻いた上着には、血がついており、血が付いた部分を内側にしていることで隠されている。


 実は、汚れた男の体自体はそれほど汚れてはいない。

 ぼさぼさの長髪が、彼を汚く見せているのだろう。


 その男とは誰なのか。

 俺である。


 血の付いた部分を隠したことによって、多少避けられなくなったが、まだ避けられているのは変わらない。

 みんなが道を開けてくれる。


 とても歩きやすい。(物理的に)

 とても歩きにくい。(精神的に)


 なんだかなぁだよね。


 こうして歩いていると、たくさんの看板が目に入ってくる。

 そのどれもが日本語、もしくは英語で書かれている。


 転生、召喚による言葉の違いを、勝手に翻訳してくれるシステムがたまにある。

 いわゆる転生特典。

 アニメで見た。


 俺の知識の源、大体アニメ。もしくはラノベや漫画。


 いやだってしょうがないじゃん。

 引きこもってたらアニメくらい見るよ。


 俺の引きこもり時代。

 一度アニメを見て、はまってしまった。


 やはりアニメやラノベや漫画には不思議な力があると思うんだよね。

 見た人を虜にする力が。


 それで看板がほとんど日本語で見えている件についてだ。

  この世界でも日本語を使っている説。

  転生特典で読めるようになっている説。

 このどちらかだ。


 本音を言うと、文字が読めればどちらでもいい。

 コミュニケーションが取れればそれでいいのだ。

 自分にコミュニケーション能力があるかどうかは、また別の話だが。


 とにかく、読み書き会話が出来さえすれば、その過程なんてどうだって良いのだ。


 なら、こんなに考える必要もなかったのでは。


 無駄なことを考えていた。

 しかし俺は、無駄なことを考えるのは悪いことではないと思う。

 然るべき時に然るべきことを考えていればそれでいい。

 何を考えているときも、無駄な時間ではないはずだ。

 何かを考えているということに意味がある。

 俺はそう思います。


 ということで、また新しいことを考え始める。



 ---



 あれからしばらく歩いて考えがまとまってきた。

 ちょっと前まではここは日本に似ていると思っていたが、実際は、日本と大きく違うようだ。

 もちろん、日本と全く違うというわけではない。

 日本との共通点も多々ある。


 例えば並んでいる店舗だ。

 ■ーソンやスシ■一などの前世で見たようなお店が結構並んでいる。

 だが微妙に違う。

 ローソーンだとかスシ(ぐち)だとか。

 こうしたお店が多いのは、偶然ではないのだろう。

 きっと俺以外にも転生者がいるはずだ。

 気が向いたら探してみることにしよう。


 ちなみにこれまで見つけた日本とこの世界の違う部分で、最も目立っていたのはやはりあれだろう。


 少し前、広い道を歩いていた時のことだ。

 頭上を飛んでいく大きな何かを見た。

 それが何なのかと見上げてみたとき、目が飛び出るかと思ったものだ。

 人の集団が飛んでいたのだ。

 しかも生身で。

 そりゃあ、驚くよね。

 ビルの谷間を飛んでるのは鳥であってほしい。


 タケ■プターも付けづに空って飛べるんだね。


 語弊がありそうなので言っておくが、前世にタケ■プターがあった訳でも、その他の技術で飛べていた訳でも無い。


 それにしても、いくら見渡しても交通機関がない。

 何やら駅のようなものはあるがそこに線路が繋がっている訳でもないし、バスやタクシーもない。

 地下鉄かもとは思ったが、地下につながりそうな階段はない。

 地下鉄でもないのだろう。


 地上にも地下にも電車が通っていない駅。

 駅ではない可能性も視野に入れてみたが、表の看板にも「駅」と書いてあったのできっと駅なのだろう。


 こんな駅、なんの意味があるのだろうと駅の中をうろうろしていると、何やら見たことの無い装置が並んでいる場所があった。

 その装置は、上に乗った人を次々に消していった。

 なんだあの恐ろしい装置は。

 できるだけ近づきたくないな。


 とまあ、そんな具合でここには日本と違うところが多くある。



 ---



 情報を集めるために数時間歩いてきたおかげて、この世界のことを多少知ることができた。

 

 小脇の細い道にも結構入っていったものだ。

 だって、男の子だもの。

 細い道とか気になっちゃうよね。

 こんなところにつながるのかと驚いた道も多くあった。


 今何をしているかというと、座る場所を探している。


 この世界に来てからは、まだ数時間歩いただけだ。

 しかし、この世界にくる前にも、あの退屈な世界で長い間歩いていた。


 もうそろそろ座りたいよね。歩くの疲れちゃったよ。

 何事にも休憩は大切だ。


 こうして座るところを探しているのだが、椅子自体は結構見る。

 しかし、どれも先着がいるのだ。


 あそこの席なんてカップルで座っている。

 公衆の面前でイチャイチャと・・・・・・

 うっとうしいでございますよ。

 場を慎みなさい。


 早く座りたいものだ。

 長い時間歩き続けるのは、骨が折れる。

 慣用句ではなく、本当に足の骨が折れそうだ。


 ああ、

 もうカップルの上に座っちゃおうかな......

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