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転生したら普通に生きたい  作者: 猫又犬太郎
第1章 『転生』
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第三話 『はじまり。』

「あー、目がチカチカする」


 光が急に強くなったせいで目を覆うのが少し遅れてしまい、光が直接目に入り込んできてしまった。

 そのせいで目がチカチカする。

 それどころか、少し痛いまである。頭も痛い。

 この異世界、やってくることが高レベルだ。

 同じ拷問2回に、失明ギリギリのフラッシュ攻撃。


 ちょっと、異世界人への対応ひどすぎやしませんかね。

 異世界人ってもっと優遇されるべきなのでは?


 周りが騒がしい。


「うるさいなぁ......」


 今、俺の目が大変なことになっているのに周辺でペチャクチャしゃべりやがって。

 もう少し心配してくれてもいいんじゃないですかねぇ。


 こちとら異世界人ですよ。

 魔王、倒しちゃうかもですよ。

 期待のルーキーなんですよ。

 そんな仕打ちしてもよろしいのでしょうか。


 いいや、良くない。

 この世界の魔王を倒す気が失せちゃいますよ。

 まったくもう。


「ん?

 人の声?」


 人の声が聞こえてくるなんて、あの何もない世界ではありえないのでは?

 あの世界で、人の気配は感じ取れなかった。


 周辺を確認するため、チカチカする目を無理矢理こじ開ける。

 まだしっかりとは見えないが数多くの色が存在しているのがわかる。

 その色の中には、動いているものもある。


 人だろうか。

 モンスターだろうか。

 色合い的には人間だろう。


 たくさんの話声や足音に混ざって水の音が聞こえる。

 近くに噴水でもあるのだろうか。


 噴水は結構好きだ。

 何も考えずに無心で見続けることができる。

 耳を澄ませ、落ち着いた状態で形の決まってない水を見ているってのがいい。


 まぁ、今見えないんだけどね。


 そうは言っても、だいぶ見えるようになってきた。

 やはり、動いていたのは人のようだ。


 だが少し様子がおかしい。

 俺の周辺を通る人は皆、俺から逃げるように楕円状に弧を描いて通り過ぎていく。


「なんか、すごい避けられてる......」


 そんなにあからさまに避ける必要ありますかね。

 まぁ、この服のせいだろうが。


 ようやくしっかりと見えるようになってきた目で、自分の着ている上着を見ながらそう思う。


 さっきから聞こえていた噴水は俺の左手側にあった。

 まぁ、それは最初から分かってたんだけどね。

 想像していた通りとてもきれいな噴水で、落ち着いて見ることができる。

 だが今は、それどころではない。


 俺の立っている所は少し暗い。

 なんというか、太陽光が当たっていない感じがする。

 遠くには青空も見え、昼であるのは間違えないのだが。


「......!?」


 俺は頭上に広がる光景に目を丸くした。


 俺は今、複数の柱に支えられた高床式の何かの下にいるのだ。

 なんだこれは。

 大きな屋根か?


 何のための屋根だよ。

 屋根な訳がない。

 ならなんだというのだ。


 噴水を中心に展開されているこの屋根っぽい何かには、結構こだわったのであろう装飾が施されている。

 オシャレかどうかを、俺に判断することはできない。


「ん?」


 ふと噴水の方を見てみると、噴水には光が差しているようだった。

 屋根っぽい頭上のそれも、噴水の上には丸く穴が開いている。


 で、この屋根っぽいのは何なんだよ。

 この下から出て確認するとしよう。


 外に出る際、俺がどんな場所にいるのかと周りを見渡してみると、四階建てくらいの建物がずらっと並んでいた。

 建物の雰囲気は平成の日本風建築である。


 なんなんだ、この場所は。

 日本なのか?


 そんな現状では全く解けそうにない問題を頭に浮かべつつ、さっきまでいた屋根っぽいものが何だったのかの答え合わせをする。


「なんだよこれ......」


 そこには白っぽい色を基調とした、高床式の宮殿があったのだ。

 丸い土台に乗っているのではない。

 宮殿自体が上から見て円形に建設されているのだ。


「なんだよこれはー!」



 ---



 異世界転生という良く分からない現象との遭遇に、俺は大声を出してしまった。

 ただでさえ俺を避けて通っていた通行人がさらに俺を避けはじめ、俺は完全に一人になった。


 まぁそれも過去の話。

 今は避けられていた一番の理由でもあろう血の付いた上着を脱ぎ、腰に巻き付けて血痕を隠したことでその問題は解消されている。

 

 てなわけで現在、俺はこの場所について知るために少し歩き回ってみている。


 そこで分かったことがいくつか。

 ここはどうやら都市っぽい。

 それも少しだけ日本風である。

 異世界と言えば西洋風というイメージがあったので少し違和感はあるが、まぁそれは良いだろう。


 いくら日本に似ているからと言って、何もかもが一緒と言う訳ではない。


 その一つがこれ。

 車が通ってないのだ。

 ただ通ってないだけではない。

 そもそも、車が通るための道すらないのだ。このような都市的な場所で道路がない場所はあまりないだろう。


 大きな道路はある。

 しかしそこには通行人が広がっている。

 しかし彼らのマナーが悪いという訳ではない。

 その大きな道は歩道なのだ。


 この日本風建築のせいで、一瞬だけここが日本なのではと思ったがやはり違う。

 日本の隅々まで調べながら旅をした俺にはわかる。


 こんな場所、日本にはない。

 部分的には似ているが、全体を見ると大きく違っている。


 西洋風の噴水を中心に四方向に道が広がっていて、横幅の広い道の真ん中には木が植わっており噴水から遠ざかる道と噴水に近づく道に分かれている。

 人は道全体に広がり歩いており、自転車のようなものが走っている。


 自転車のようなものとはいっても、確実に自転車と違う部分がある。

 浮いているのだ。不自然である。

 あれ、どうやって浮いてんの?

 どういった技術なのか気になるな。


 死んでからというもの、まったく自分の知らない場所をたらい回しにされている。


 「なんか、変なこと考えてるな」


 「()()()()()いろんな場所に連れてこられている」ってのはなんだか変な感じがする。


 この世界、日本に似ていいるがやはり異世界なのだと感じる部分がある。

 宙に浮かぶ自転車もそうだが、通行人が身に着けているもの。


 例えばあの人。

 噴水側に歩いている若い男性を見てみよう。

 あの男は日本で持っていたら一発で銃刀法違反であろう剣を堂々と腰に携えて歩いている。

 他にもよく見てみると腰に銃を取り付けているものや、弓を背負っている人が何人もいる。


 普通の日本ならこんなことはないだろう。

 やはり異世界だな。


 ()()()があって日本の常識が少し変わったが、やはり日本ではこうはいかないだろう。

 仮にここが日本なのだとしたら、日本の常識と見た目がここまで大きく変わるのはおかしい。

 俺が長い間暗い場所にいたのは確かだが、日本の常識や街の構造が大きく変わるほどの長さあそこにいたはずがない。

 流石異世界だな。


 なんだろうか。

 ここが異世界だと思ったら、なんだか俺には不思議な能力があるんじゃないかと思えてくる。

 第六感的なあれだ。


 試しに「フンッ」とか言って不思議な力を使ってみようとしたが、やはり無理だった。

 俺にそんな力は無いのか、適当にやるだけじゃダメなのか。


 未知の不思議パワーの事なんて、今の俺に分かるはずもない。


 こうして俺は、人間が存在する生前の世界とは違う異世界にめでたく転生できたわけだが......


 女神や神様がいなかった。


 お願い聞いてもらえないじゃないか。

 転生者は転生特典とかついてくるんじゃないの?

 結構期待してたんだけどなぁ


 他人......他神に期待してもしょうがない。

 せっかく異世界転生という珍しい現象に遭遇したんだ。

 できるだけ頑張って生きることにしよう。


 前の世界と同様、この世界に生きる理由はない。

 生きる理由を明確に持って生きている奴なんて少ないんじゃないか?


 だが、生きる方法はあるのだ。

 生きることはできるのだ。

 積極的に死ぬことはないだろう。


 それどころか心躍る異世界生活。

 生き抜いてやろうじゃないか。

 頑張ってやろうじゃないか。


 そしてあわよくば、俺は普通に生きたい。


 俺は生前、ずっと引きこもっていてしばらくの間外との接触を避けていた。

 外に出るようになっても、誰か知らない人と関わることなんて一切なかった。


 それが普通じゃないとは言わない。

 それが異常だとは言わない。


 でも、普通の学校生活を送ってみたかった。普通の青春を送ってみたかった。


 特別じゃなくていい。

 有名になりたいなんて思っちゃいないし、世界を変えたいだなんて思っちゃいない。


 せっかく日本に似たこの世界。

 異世界で、日本と違う事なんて山ほどあるかもしれない。


 でも......それでも。

 普通に学校に行って、普通に青春して、普通に恋をしたい。


 異世界ものみたいなファンタジー感のあるパワーだってあるかもしれない。

 が、それはこの世界での普通だ。


 この世界の常識で俺は、それなりに生活したいのだ。


 要は、

 転生したら普通に生きたい。

第一章『転生』・終了


次章・第二章『神国』

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