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第4話:俺たち、転生者懲らしめ隊!

「うわぁ! ここが異世界ですか! 見たことない物が、たくさんありますよ! すごいなぁ!」

「おい! 何やってんだ! さっさと歩け!」


 俺たちは、異世界のアチアツイに来ていた。クソ異手世が来る前に、クレーム電話をかけてきた神の世界だ。俺たちは転生者がいるという、火山へ向かっていた。


「本当に、魔法ってあるんだなぁ!」

「魔法くらいあるに決まってんだろ、バカかお前は」


 クソ異手世は、あれがすごい、これがすごいと、頻繫に立ち止まる。さっきからちっとも進まないので、イライラしてしょうがない。


(これだから、嫌だと言ったんだ)


「神様って、かなり口が悪いですよねぇ。そんなんじゃ、イアドルさんとも上手くいきませんよ?」


 こいつはいちいち、神がムカつくことを言ってくる。


「人間ごときが、神と天使の仲に入って来るんじゃねえ!」

「いいのかなぁ。そんなこと言って」


 しかし、クソ異手世は全く動じない。秘密を握られている以上、立場の差は歴然だった。


(……ちくしょう!)


 俺は怒りを、押し殺すようにして歩く。通行人が俺のことを見ている気がするが、気にする余裕などない。


(火山はこの先にあるはずだ。早く終わらせて、イアドルちゃんのところに帰ろう。これ以上ないくらい、優しくしてもらうんだ)


「神様、あれ買ってください」

「あ゛あ゛?」


 武器屋の前を通ったとき、クソ異手世が何か言ってきた。


「あの剣がかっこいいので、買ってくださいよ、神様」

「はあ?」


 クソ異手世が、棚に置かれている剣を指している。“神憑りの剣”と書いてあった。どうやら、Sランクの武器らしい。値段は、この世界の金貨で50枚。日本円で考えると、だいたい50万円くらいだ。もちろん、俺はクソ異手世に何か買ってやろうという気持ちなど、塵ひとつもない。


「ふざけんな!! 買うわけねぇだろうがよ!!」


 俺は思いっきり怒鳴りつけた。そもそも、こんなに高い物を買ったら、一瞬で俺の貯金が吹っ飛ぶ。

 ビュンッ! と、クソ異手世の前に四角い画面が現れた。


「え~っと、イアドルさんのチャンネルは、っと……」

「待て待て待て待て!」


 俺は力を使われる前に、大慌てで止めた。よりによって、こいつは“超通信”の能力を手に入れやがった。あらゆる世界の全ての存在と、自由に連絡できる力だ。つまり、クソ異手世はいつでもどこでも、イアドルちゃんと話せる。


「神様がいじめてくる、って伝えないとなぁ。イアドルさんも、何かあったらすぐ連絡してくださいね、って言ってくれてたし」

「ぐぅ……!」

「ついでに、神様の気持ちも教えちゃおうかなぁ~」

「やめろ!」

「あの剣をくれたら、画面をしまいます」


 クソ異手世は、死ぬほど腹立たしいドヤ顔をしていた。こんなの、人質をとられているも同然だ。


「……くっ……この野郎、覚えてろ!」


 俺は勢いよく、店に向かう。


「おい! この“神憑りの剣”をよこせ!」

「え? この剣ですか? 金貨50枚しますけど、お客さんに払えますかね?」


 店主は俺のことを、舐めるように見てきた。お前みたいに貧乏そうな客に払えるのか、と顔に書いてある。


「うるせえ! さっさとよこせってんだよ!」


 金貨を力の限り店主に投げつけた。


「うわあ! なんて凶暴なヤツだ! こんなにおっかない客は、初めてだよ!」


 奪うように、“神憑りの剣”を取る。そのまま、クソ異手世にぶん投げた。


「うおっと、危な! ……おおおお! すげえ! カッケー!」


 クソ異手世は、満面の笑みで“神憑りの剣”を眺めている。あっという間に、今月は赤字になった。


「クソッたれええええええええ!」


 俺は市場の中心で、心の底から叫んだ。


□□□


「ハァ、ハァ、暑いなぁ」

「黙れ! 文句言うな!」


 俺たちは、火山を登っていた。歩くだけで、汗がダラダラと流れてくる。おまけに、“神憑りの剣”を持たされているせいで、余計に暑かった。


「いっそのこと、神様の力でひとっ飛びすればいいのに」

「この世界の神に、目立つようなことはするな! って言われてんだから、しょうがねえだろ! 俺だって、飛べるもんなら飛んでるわ!」

「アチアツイの神様の方が、偉いんですか?」

「そうだよ!」

「神様って、結構下っ端なんですねぇ」


 最悪の気分で登っていくと、マヌケな顔の日本人がいた。転生者は、アイツに違いない。マグマの中で、意気揚々とピッケルを振るっている。


「それそれ! 火傷無効のスキルは最高だな! マグマからしかとれない、レアアイテムが取り放題だぜ!」 


 このバカのせいで、火山活動が活発になっている。地震も多発して、とても困っているそうだ。


「おい! そこのお前! さっさと採掘を止めろ! お前のせいで困ってんだよ! 地震が頻発してんだ! 火山だって、噴火したらどうすんだよ!」

「なんだぁ、お前は。そんなのどうでも……」

「うるせえ!! 神罰じゃ、コラァ!!」


 俺は特大の雷を呼び寄せた。


「うぎゃあああああ!」


 今までの怒りを、渾身の力でぶつけてやった。

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