#7過去
「やっと私の求めていた人に会えた。」
どこか安心したように呟いた。
「どういう意味だ?」
迅が聞く。
「そういえばまだ名前を言っていなかったわね。」
迅の質問に対して何も答えずに言う。
「私はマリ。あなたは?」
「、、、高橋迅。」
「俺は速川拓巳。」
「拓己と迅ね。わかったわ。じゃあさっきの質問の答えを話す前にあなたたちはこの車を知っているかしら?」
マリが後ろの車のカバーを外すとそこにはC6コルベットが置いてあった。
「C6か。」
迅が言う。
「ただのC6ではないわ。」
その言葉に迅はC6の周りを歩いて観察してみる。
「確かにカスタムはしてあるが、ドラッグカーみたいなカスタムだな。、、、いや待て。ドラッグ仕様のC6、まさか、、、。」
「迅、どうかしたか?」
「大きく張り出したリヤのオーバーフェンダー、ケツ上げの車高、そしてリヤのドラッグタイヤ。やはり、、、。」
「そう、『走り屋潰しのコルベット』よ。」
「たしか雷帝が有名になり始めた頃に同時に有名になり始めたC6だったか?」
「拓巳もやっぱり知っていたか。」
拓巳の言葉に迅が言う。
「2人とも知っているなら話が早いわ。少し長くなるけれどいいかしら?」
「構わない。」
迅が答える。
「じゃあ、どこから話そうかしら。」
「なんであのC6を持っているんだ。」
拓巳が訊く。
「あれは私の師匠の車だったの。師匠とは何年も前にアメリカで出会ったの。」
そう言いマリは過去の話を始めた。
「初めて師匠と会ったのは5歳の時だったわ。師匠は身寄りのない私を拾い育てて、名前もくれた。私が免許が取れるようになった時にはあのマスタングを持ってきてチューニングやドラテク、色々なことを教えてくれた。」
マリはそこまで話すと少し寂しそうな顔をした。
「ある日突然、師匠が『日本に雷帝という凄いドライバーがいる。』って言って私と一緒に日本に行ったの。もちろん私のマスタングや、愛車のC6と一緒に。そこで峠や首都高でストリートレーサー、いや、走り屋を片っ端から倒していったらいつの間にか『走り屋潰しのコルベット』なんて呼ばれるようになったの。きっとあんなドラッグに合わせたチューニングなのにありえない位コーナーが速かったから呼ばれるようになったんじゃないかな。そして有名になったぐらいに雷帝と首都高でバトルしたの。」
「結果はどうなったんだ。」
今度は迅が訊く。
「負けちゃったわ。でも師匠は『アメリカでもっと修行する。』って言ってアメリカにトンボ帰りしたわ。それからどんどん腕を磨いていった時にあれは起きたわ。」
「何が起こったんだ。」
拓巳が息を呑んで訊く。
「ドラッグレースに誘われてその日もC6でドラッグレースをしたわ。その時に相手の車がバランスを崩して師匠の車を巻き込んだの。師匠も相手もその時亡くなったわ。」
マリは今まで以上に寂しい顔をした。
「、、、その後はどうなったんだ。」
拓巳がゆっくりと、しかしハッキリと言う。
「その後私は必死になってC6を直したわ。師匠を忘れたくないから、、、。2ヶ月くらいかかってようやくC6を直した時に師匠が生前に言っていたことを思い出したわ。
『私にもしものことがあったらC6はあなたに託す。そして雷帝に勝ってきて。』
そう言っていた。だからC6のドアを開けて乗ろうとしたらいつの間にかいつも座っていたナビシートに座っていたわ。その時に気づいたの。私はまだC6を運転できないって。でも師匠はあの時にこうも言っていたわ。
『もしC6に乗れなかったら雷帝のいる日本であなたに勝つストリートレーサーを探しなさい。そうすればきっと乗れるようになる。』
と。その言葉を信じて私は日本にまた来たわ。」
そこまで話してマリはため息をついた。
「そしてそのレーサーがあなた達よ。」
すると迅が口を開いた。
「話はわかった。だがなぜ俺まで。俺はお前に勝っていないぞ。」
「拓巳と同じ感じがしたのよ。」
「そんな事でいいのか?」
「いいわ。師匠もカンに頼るのも大事だって言ってたし。」
「なら仲間になると言う意味でいいか?」
拓巳が訊く。
「いいわよ。」
「ならいいんじゃないか。迅。」
「拓巳がいいなら俺はいいぞ。」
「なら今から俺たちは仲間だ。これでマリはC6に乗れるな。」
「多分ね。」
「でもどうしてマリの師匠は仲間がいれば乗れると思ったんだろうな。」
拓巳が呟く。
「きっと私が頼れる人がいれば大丈夫だと思ったんじゃないかしら。」
「そうかもな。よし、今度3人で走りに行こうぜ。もちろん、マリはC6でな。」
マリは目の横に涙を浮かべて頷いた。
「ええ。もちろん!」
どうもyamaneくんです。
今回はストーリーの筋書きがある程度できていたために自分でも驚くほど早く投稿できました。これからも頑張りますので何卒。
ではまた。