突然変異まで
〈ピピッ。指定情報の座標をm/005yからm/wwa+に変更。転移によるノイズを軽減する為、転移対象周囲の空間をプロテクトとして使用します。〉
「新しい学校楽しい?」
「うぅ〜んまぁ。」と眠気に任せた声で。
〈ピピッ。座標変更処理完了。転移を開始します。〉
「じゃあ、いってきます」
(母)が新しく買ってきてくれた「これがあれば皆勤賞!空間転移装置」。便利だけど、僕はゆっくり歩いて行くのが好きだから遅刻しそうなときだけ使うようにしよう。遅刻しても良いんだけど。と既に学校に転移した僕は転移による通学の呆気なさを勿体なく感じていた。そういえば今日は学校に新しく校舎設備システムが来る日だったな。この学校では一台目らしい。少し楽しみ。
「今日からこの学校に新しく、校舎設備システムが導入される事になった。みんな仲良くするように」
《ミナサンコンニチハ.ワタシハコウシャセツビセンヨウシステムロボ.ピーマンデス.》
かわいい。ピーマンと言う名前らしい。凄いなあの子は。もう自分を確立している。そういうプログラムだったとしても、それを遂行し、名前まで。僕はまだ0番だ。僕はその日、ピーマンの様子を眺めていた。校舎設備というのはお掃除が主な仕事らしい。おかげで放課後になる頃には教室はピカピカピーマンだった。
「いけない。忘れ物しちゃった。」僕は家に帰る途中忘れ物を思い出して学校に戻ってきた。そういえば、、と思いついた瞬間、「そういえば」の対象が前にいた。ピーマン。
《オヤ.ゼロバンサンジャアリマセンカ.マダガッコウニノコッテイタノデスカ》
「あぁいや忘れ物をしちゃって。取りに来たんだ。」、次の言葉を発声するタイミングを伺ってから「ピーマンはこれから学校に住むの?」
《ハイ.キョウシツニジュウデンダイガセッチサレテイルノデ.ソコデネムリマス》
二人で教室に向かっていく。教室に着くとそこには沢山のゴミが捨てられていた。
「あれ。誰がこんな。ピーマンがせっかく綺麗にしてくれたのに。」
ピーマンは何も言わずに掃除を始めた。
「...ピーマン。もう眠りなよ。これは僕は片付けておくから。」
《イエイエ.コレモワタシノオシゴトデスカラ》
プログラム。そこからの脱出。精密な設定通りに動く僕たち。
「じゃあ、一緒に掃除しよう。」