覚醒直後の案内
スピさんはノートを広げて何か書いている。板書では無さそう。僕は先生の声と、それに応じて鉛筆を走らせる音を黄昏の背景音楽にした。気づけば放課後になっていて、スピさんは消えていた。覚醒した僕のそばに誰かがやってきた。
「こんにちは。僕は学級委員。放課後君に校内の案内をするよう、先生に頼まれたんだ。」
この学校は部屋の数が無数にあって、その殆どは生徒が自由に使うための部屋らしい。
「許可証を発行して、部屋を借りるんだ」
主な用途は〈部活〉〈溜まり場〉〈超能力開発〉〈いたずら〉
「0番君は措定作用、どの程度扱えるの?」
「僕はあんまりそれ得意じゃなくて」
措定作用はこの世界にありふれている。措定作用の発生は言わば意識の確率を意味する。不定形の意識をある程度「措定」し、実際に「作用」させる。僕が措定作用を上手く扱えない理由はそこにある。僕は僕の事を何も知らない。「何も知らない」を「措定」し「確率出来ない」を「確率」して「措定作用を上手く扱えない」措定をしている。
「そう。部屋に掛けた措定作用は、部屋を返却する時に校舎が自動で解除するようプログラムされてるから、部屋を借りることがあったら覚えておいて。でも上手いことやって作用を残したままの人も結構いて、それが原因で学校全体に影響が出てるけど、先生にはバレていないみたい」
「学級委員がそれを知ってて黙ってても良いの?」
「いいんだよ」
そうか。みんな自由なんだ。
「案内ありがとう。後は自分で探索してみるよ」