賢者と聖女と勇者な彼と気楽な女神
美しいのかは分からない。
みなが美しいと言うのだから、美しいのだろう。
賢者は女神マトレアを眺めた。賢者な彼は外見の美醜に囚われない。
「マトレア様」
聖女は感激して膝まずいている。勇者は女神を見て笑っていた。
「魔人を封じる命をそなたらに下す」
女神がそう言うと白い光の輪が首に巻かれた。
「そは、我が力の輪。9人の魔人を封じれば、輪は頭上に輝くことになりましょう」
つまり、聖人になって長命を得る。知識の探求をしたい賢者とって、最高のご褒美だ。
「偉い女神がいるのに、なんで魔人を自分で封じない?」
勇者が不思議そうに訊ねた。
「様々な理由があるのです」
と女神マトレアは答える。
「怖いんだろ」
と勇者。
「怖くはないです」
女神の声が引きっているように聞こえる。
「女神は力が大きすぎるのです」
「つまり、ノーコン?」
「勇者、失礼ですわ」
聖女がたしなめる。
「勇者、試練だよ。聖人になるための試練。そうでしょ、女神マトレア」
賢者は女神に助け船を出した。
「賢者の言う通りです。これは試練なのです」
ほっとしたように女神が頷く。
「魔人は悪しき力を使い、人々を苦しめるでしょう。」
「人々が困っているのでしたら、私はこの身を捧げても救いましょう」
聖女は女神に祈りるようにして言った。
「人々を教え導き、善を施すのは賢者の勤め。慎んで拝命いたしましす」
賢者も女神に頭を垂れる。
「魔人に悪いことをさせなくすれば、いいんだな」
勇者は女神に確かめる。
「そうです。勇者。世界を救えるのはあなただけ」
「分かった。みんなも困るっていうし、女神も魔人が恐いんじゃ仕方ないな。やるよ」
「その言葉を待っていました」
女神マトレアは慈愛の微笑みを我々に投げ掛けた。
「では、賢者には真明の書を、聖女には癒しの宝玉を、勇者には奇跡の剣を与えます」
真明の書はあらゆる攻撃魔法と防御魔法が載っている。
癒しの宝玉は、文字通り魔人から受けたダメージを回復させる。
奇跡の剣は、勇者が極限状態になった時だけ発動する力だという。
どういう力かはその時にならないと分からない。
「では、行きなさい。わが愛し子達よ。人々を、世界を救いに」
女神は両手を広げる。
光が三人を包み込み、女神の世界から人の世界へと送り出す。
「怖くないもん」
女神が消え去る時に残した言葉は、幻聴であって欲しいと賢者は思った。