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賢者と聖女と勇者な彼と飢餓の魔人

魔人は、今から出す問いかけに正しく答えれば、自ら眠りにつくと誓った。

出されたのは一つのパン。


「汝らに質問する。汝らは飢えている。しかし、食べ物はこのパンのみ。汝らはいかにして飢えと渇きを満たすや?」


魔人の言霊の魔力ために三人に強烈な飢餓感が起こる。


「難問ですね」

飢餓感を必死にこらえて賢者は言った。

「一人で食べるのは不公平。三人で分けても、飢えを満たすには至らない。極限状態の時、どう行動するのか。我々の英雄としての資質が問われている」


「私はいりませんわ。なんなら、私のことをお食べになってもいいですよ」

聖女がかすかに微笑んで提案した。

「他の三大欲望の一つでごまかす……いや、そんなことできません」

賢者が慌てて首を振った。

「食べにくいなら、兎に変身して火に飛びこみましょうか?」

「ますます、できません」

賢者は今にも変身しそうな聖女を止める。聖女の彼女はすぐに自己犠牲を発揮しようとするのだ。


二人が押し問答しているうちに、勇者がパンを手に取った。

「ほほう、他の二人が争っているうちに独占するか。強欲なことだ。勇者とて飢えれば浅ましくなる。飢えのために村を襲った我と何がちがう?」

魔人は嘲笑う。


「魔人、お前を倒せば、今感じている飢えはなくなる」

勇者はすらりと剣を抜いた。


「勇者、それは最悪の一手だ」

「私を食べていいですから」

賢者と聖女が勇者を制止した。

しかし、勇者は、女神から与えられた奇跡の(つるぎ)を無造作に振り下ろした。


振り下ろされた剣がそれに触れると、それは二つに分裂した。

「なんてことだ」

「まさか、そんなこと」

聖女の体が震えている。

「ふははは。勇者よ。お前の答えはそれか!」

魔人が哄笑をあげた。



勇者の手の平にあったパンは、大きさも形もそのままに二つに増えていた。


「奇跡の力を使っちゃいけないと言ってなかったろ?」

勇者はサクサクとパンを剣で増やしていく。


奇跡、それは、極限状態に陥った勇者だけが使える女神の力。


「お前、お腹空いているんだろ?食べろよ」

勇者は、魔人にパンを差し出す。魔人はしばらくためらった後、勇者の手からパンを奪い取る。

「お前が、そこまで言うなら食べてやる」

魔人がパンを食べ始めると、三人の感じていた飢餓感も薄れていった。


こうして、魔人は再び眠りについた。

三人は襲われた村人に、魔人が飢えないように、お供えをするように言い含めた。


勇者が救世主と呼ばれる日も近いと、賢者は聖女に耳打ちした。


読んでくださりありがとうございます。

ぴったり、1000文字達成な話になりました。


お人よし勇者と天然聖女な二人を抱えて、苦労する賢者な話を書いてみたくなり、投稿しました。

お気にめしたら幸いです。

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