澄み渡るほど
そんなことを俺は考えていると、パティは何かを考えながら頷き答えた。
その真剣な眼差しに嬉しさが込み上げてくるが、いささか硬いとも思えた。
「なるほど、よく分かりました。
トーヤさんのことは一切の他言を控え、お料理に関しても信頼のおける人にのみふるまうと誓います」
「……いや、何もそこまでしなくても……」
「ううん、トーヤ君。これはパティちゃんが正しいと思うわ。
空人はね、この世界の住民が決して持てないほどの並外れたスキル所持者なの。
それを軍事利用しようと目論む者は多いと心に留めた方がいいわ。
そう考えること自体がとても悲しいことだと思うけど、いまはフラヴィちゃんもいることを忘れないで」
そうか。
そうだったな。
もう俺ひとりじゃないんだ。
フラヴィに危険が及ぶような事態はなるべく避けるべきだ。
それを真顔で説明されなければ分からないことに、危機感を覚えるべきだな。
最悪、フラヴィを人質に取られ、言われるがままになる可能性だって考慮するべきなんだ。
この子を護りきる強さにも限界があるのは理解していたつもりでも、そこまで考えが至らなかったことはしっかりと覚えておくべきだろう。
「……素直で、真面目。
誠実で心が澄み渡るほど美しい。
トーヤさんは本当に素敵な男性ね」
「でしょー? 私の旦那様だもの! そこいらの男とは格が違うのだよ!」
「……突っ込みどころ満載だが、それよりも俺の思考が読み取られているように思えてならないな……」
「いいのいいの、トーヤ君はずっとそのままでいてね。
あなたの心に救われる女の子がきっといるはずだから」
……なぜ女の子に限定されるのかわからないが、どうやら俺はこの世界の女性にとって魅力的に見えるものを持っているらしい。
瞳の輝きと何度か言葉にされたが、この世界の人では出せない輝きがあるのか。
それとも空人特有の色でもあるんだろうか……。
「そうだ!
折角パティちゃんがいるんだし、トーヤ君も占ってもらうといいわ。
パティちゃんは占いもできちゃう、とってもすごい子なんだよ」
「占い? パティさん、そんなこともできるのか?
趣味と言ってたが、魔物に関する研究でもしてるのかと思ってたが」
「占いも魔物の研究も趣味の領域で、私の本職は魔術師なの」
「なるほど。それで世界をひとりで旅できるんだな」
「女性の一人旅には別の危険がつきものだから、かなり強力な魔法や技術を持たなければとっても危ないのよ」
どこか悲しげに答えたパティだった。
大変なんだなと思う以上に、この世界には最低な輩が多いのだと再認識する。
思えば、間接的とはいえ俺も関わったんだ。
救いようのない馬鹿が確かにいることは、常に自覚しておくべきだな。
とりあえず、にまにまとした視線を向けないで欲しいが、何を言っても無駄そうな顔をしているな。
ふたりとも肉料理も食べ終わった頃合だし、そろそろシメを出すか。
このあと出した食後のデザートに、パティが驚愕しながら固まったのは言うまでもない。