随分印象が
ラーラは思い込みの強さから、変なスイッチが入るとかなり面倒な人になる。
それも冗談を悪乗りで話している体を感じる俺には、かなりしんどく思えた。
しかし反応しなければしないで違ったスイッチが入ることが多く、未だにどう扱っていいのか分からない時が稀にある。
傍目にはいつもと変わりないように思われがちだが、今がそんな時だった。
「……お姉さんのこと、優しくしてくれるのはフラヴィちゃんだけね」
「きゅぅ?」
虚ろな目のラーラにフラヴィは首をかしげた。
あどけない瞳には彼女がどう映っているのだろうか。
変な影響を与えなければいいが……。
「いま、ものすごく失礼なことを思ってないかしら?」
「そう思えたんだったら、いつものラーラさんに戻って欲しいんだが」
「あらあら。やっぱり新妻が恋しいのね、旦那様はっ」
くねくねとしながら楽しそうに話すラーラにとまどいを隠せない。
「……この数日の間に随分印象が違って見えるな……」
「食生活の影響を色濃く受けているんじゃないかしら。
トーヤさんのレシピを見せて貰ったけど、どれも美味しそうなお料理だったわ。
そんな生活から糧食に戻した衝撃は、彼女の心にも影響を与えたんだと思うの」
「なるほどな。
それほど美味しいと思ってくれたのは作り手としたら嬉しいところなんだが、こうも悪影響が出てるとなれば俺の責任だな」
その言葉に、ぱぁっと表情を明るくしたラーラ。
続く彼女から発せられるものは、恐らく子供でもわかるだろう。
「――しない」
「まだ何も言ってないわよッ!」
「まぁ、食材を仕入れてくれたのなら助かるが、パティさんが作るか?」
「私もそれほど美味しいお料理が作れるわけじゃないのよ。
いいものが食べたいって言うからいい食材くらいは買ってきたけど、トーヤさんの作るものは一流料理店でも出てこないほどのとても美味しいお味なんでしょう?
さすがにそれほどのお料理を私は作れないわ。家庭料理が関の山ね。
レシピがあれば挑戦してみたいけれど、それには時間がかかると思うの」
「なら俺が作るか。
折角だ。お礼もかねて、パティさんにご馳走するよ。
食材費はラーラさん持ちになってるけど……」
「まぁ! それは楽しみだわ!
野営暮らしであまり美味しいものを食べてなかったの!」
花が咲いたような笑顔を見せるパティに視線を逸らした。
こうも綺麗な大人の女性が集まることに耐性のない俺にとって、若干の居心地の悪さを感じてしまう。
まぁ、期待されるのは悪い気持ちにはならないし、彼女には恩義もある。
何か美味しいものを作れば、少しは恩を返せるだろうか。
そんなことを俺は思っていたが、どうやら気合を入れすぎたらしい。
申し訳なさとともに後悔することになったのは、もう少しだけ先の話だ。




