青天の霹靂とは
青天の霹靂とはこういったことを言うのだろうか。
あまりの衝撃に固まっているのが自分でもよく分かる。
それはどうやら俺だけではなかったようだ。
「あらあら、驚いたわ。
まさかこんな場所で再会するなんて」
「同じくだ。
ラーラさんと知り合いだったんだな、パティさん」
「ええ。先日はありがとう、トーヤさん。彼女は私の――」
「トーヤ君の浮気者ッ!
新妻を差し置おいて別の女性とイイ感じになるなんて!
それもよりにもよって親友のパティちゃんとだなんて!
お姉さんショックすぎて涙がちょちょぎれるわ!」
いったい何を言ってるんだ、この人は……。
また変なスイッチでも入ったのか。
大体なんだよ、ちょちょぎれるって。
初めて聞いた言葉だ。
パティにも視線を向けると俺と同じような表情をしていた。
やはり彼女は冷静な対応ができる大人の女性のようで安心した。
「彼女は私の旧友なの。
ここに来ることも目的なのだけど、この時期にあの大雨だったでしょう?
湖畔まで出れば、視界も現状よりはまだ良くなると思っての行動だったの。
リールの花も手に入ったし、どちらが本当の目的かわからなくなったわね」
「確か良薬が作れる花だったか。
大雨のあとに咲く不思議な花だな」
「世界でもフェルザーの湖周辺にしか咲かないお花よ。
気候や土壌が適してるらしいけど、栽培が現在も不可能らしいの。
文字通り不思議なお花だと私も思うわ」
世の中には不思議なことが溢れている。
特にここは異世界だし、俺のいた世界とは法則が色々と違うんだろうな。
だとすると、何かあの世界とは違う要因が花を咲かせている可能性もあるかもしれない。
「それにしても、フラヴィちゃんは問題なさそうでよかったわ」
「パティさんの助言のお蔭だ。ありがとう」
「お役に立てて幸いだわ」
優しい笑顔のパティから視線をフラヴィに戻すと、あれだけの喧騒の中でもラーラの胸で目を閉じながらくるくると可愛らしい音を出していた。
もっとも騒いでいたのはラーラだけだったが。
少し前なら飛び跳ねていたとも思えるが、この子はまた成長したみたいだ。
喜ぶべきことだろうけど、なんか寂しくも思えるな。
「愛娘の成長は、お父さんにとって寂しく思えるらしいですよ」
「……俺は何も言ってないが?」
「フラヴィちゃんは幸せねぇ。
こんなにも大切に想ってくれるお父さんが傍にいて」
「……お姉さんのことは、誰も気にしてくれないのね……」
虚ろな目をした女性が可愛い子を抱きながら何かを呟くが、聞きとれなかった俺達は会話を続けた。




