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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第一章 はじまりは突然に
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幸運

 3人の男達に、なんともざっくりとした出会いの話をするディートリヒ。

 だが、さっきそこで空人を見つけたんだ的な言い方はさすがにどうなんだろう。


 そんな簡易説明を聞くと男達は一様に驚き、言葉を失っていた。

 それほど空人を見つけることは珍しいようだ。


「そ、空人を見つけたのかよ、ディート……。すげぇな……」

「噂には聞いていましたが、まさか幸運スキルを授かるなんて……」


 戦士と弓兵のような格好のふたりが言葉にする。

 やはり俺は、いや空人は、かなり目立つ存在らしい。

 先ほどディートリヒが言っていた通りのようだ。

 一般的に空人という単語は使わない方がいいんだろうな。


 リーダーであるディートリヒが"幸運持ち"となったことに手放しで喜ぶ3人。

 あまりにも嬉しそうなその姿に首を傾げていると、その説明をしてくれた。


「幸運スキルは仲間にも恩恵があると言われてるんだ。実際効果があるようだな」

「それはリーダーが手にしないと、諍いの種になりそうな気がするんですが……」

「そいつは問題ない。取得者が仲間と認識する存在に効果があると書いてある。

 残念ながら、友人や空人であるトーヤは例外で効果がないらしい。

 なんだよこれ。わりと効果範囲がセコいぞ、神様……」

「書いてある? どういう意味ですか?」

「ん? ……あぁ、そうだったな。

 この世界じゃ常識になってるから、説明するのを忘れてたよ」


 すまないなと言葉にしたディートリヒの話によると、ステータスとはスキル項目や能力など、この世界独自のシステムを繋ぐインタフェースのようなものらしい。

 実際に試してみると、レベルを含む能力値やスキルを確認できた。

 表示された画面をタップせずに意識で開き、項目を選び、閉じることができる。


 レベルとは、経験に応じて上昇するゲーム的なあれのようだ。

 スキル名に意識を集中すると詳細を見ることができた。



<剣術Ⅲ>

 剣を扱うために必要となる技術。


<体術Ⅲ>

 体術を扱うために必要となる技術。



 適当とも受け取れる説明に疲労感がつのる。

 これは深く考えない方がいいのかもしれないな。


 いわゆるユニークスキルと思われるものも所有しているようだ。

 効果だけで判断したものだから、これらがそう呼ばれるものかは分からないが。


 だが、今更ながらに思うところがある。

 彼らの言葉に、何ら違和感を感じない点だ。


 言動に疑いの目を向けているわけじゃない。

 問題は、なぜ日本語として俺が認識しているのか、という点にある。

 ところどころ英語が混ざるのもずっと気になっていた。

 これは空人の特性か、スキルに関係するのかもしれないな。

 しっかりと確認してみると、その答えとなるものを俺は所持しているようだ。



<言語理解>

 世界の言語を理解できる。



 恐らくは自動翻訳のような感じなのかもしれない。

 非常にありがたいが、いったい誰からの贈り物なのかと考えてしまう。

 まぁ、そんなことができるのは限られるんだが、それはいい。

 それよりも遙かに大きな問題が出てきたな。


 ユニークスキルまで持たせた俺に、何をさせる気なんだろうか……。


 ……それも今はいいか。

 情報が足りない上に、この世界に来たばかりだ。

 無理して結論を出すこともない。

 理由だってないかもしれないしな。


「ユニークスキルの中でも幸運は特別でな。

 俺達も噂には聞いていたが、半分冗談だと思ってたんだよ。

 どうやら本当に存在していたし、その効果もすごいみたいだな」


 笑顔のディートリヒはその詳細を話した。



<幸運>

 空人を最初に導いた者にのみ与えられる女神の加護。

 様々な幸運を齎すが、悪行を働くと失われ、善行を重ねると効果は向上する。

 所持者が仲間と認識している者にも同等の効果を得られるが、友人、知人、空人に効果はない。



「金運上昇・無病息災・商売繁盛・家内安全・恋愛成就!

 忍ばせていた本が身代わりになって攻撃を受け止めてくれたり、落ちた物を拾うと奇襲を回避できたりするらしいぞ!

 他にも有名魔法学校に一発合格したり、縁結びにも効果があるらしい!」

「マジかよディート!? すげぇスキルだなおい!?」


 剣術や体術の説明文とは明らかに違う文字数だな。

 恋愛成就と縁結びは同じ効果に思えるんだが、別枠なのか。

 幸運っていうよりも、神社で貰えるお守りみたいな効果なんだな。


 大体なんだよその、"ペンダントで銃弾を防ぐ"的なやつは……。

 そんなうさんくさい加護で、本当に大丈夫なんだろうか……。



 白い目で見つめていると、ディートリヒがそれに気がついたようだ。


「い、いやいやいや! このスキル、本物だから!」

「……」


 弁明するようにスキルの話を続ける彼らだが、正直俺には微妙なものに思えた。


 ……まぁ、みんな楽しそうだし、それでいいか。

 そんなことを思いながら、俺は青々とした空を見上げていた。

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