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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第四章 魔物の卵
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親であれば当たり前

 さらに3日が経った。


 フラヴィは俺に視線を向けてから満足そうに膝の上で横になる。

 いつものように枕を差し出すと、すりすりと頬を寄せて眠りに就いた。


 体をすり寄せるようになったのは、つい先日からだ。

 起きている時も膝に座ったまま背中や頭を俺の腹にこすり付ける仕草をすることから、もしかしたらここが自分の居場所だとマーキングしているのかもしれない。


 ……ただの甘えから来る行動だとも、俺には思えるが。


 魔物はもちろんペンギンの生態にすら知識がない俺にとって、この子が取る行動原理のすべてを理解してあげられないことが寂しく思えた。

 この子の意思を言葉として理解できればこれほど楽なことはないし、何よりもフラヴィの想いを知ることができるなら間違った判断は極端に減るはずだ。

 そういったスキルがこの世界にあるかは分からないが、手探りで育てていくこと自体は親であれば当たり前のことなんだろうな。


 そもそも何が生まれるか分からない、それも魔物の卵を育てるんだ。

 図書館ですべての魔物を調べでもしなければ、わからなかったことではあるが。


「……一度町に戻って、ラーラさんに聞いてみるか……」


 しかし、彼女だってすべてを知っているわけではない。

 彼女の博識に甘えるように頼るのはあまりいい傾向とは言えないな。


 情報を知るなら図書館か。

 場所は聞いておいたし、行くのは問題ない。

 だがこの子が大人しく待っているとも思えないし、館内に連れて行くことも難しいだろう。


 それこそ彼女に頼るわけにはいかない。

 ひとりで育てると決めたし、何よりも小さいこの子を置いては行けないからな。


 やはり町に戻るにはまだ早いか。

 ……人間のように言葉を話してくれたら、苦労はしないんだが……。



 体を伸ばすように力を入れたフラヴィに視線を戻す。


 すぅすぅと静かに寝息を立てるこの子が魔物だという認識を俺は持てない。

 魔物とは例外なく人を襲う危険な存在で、攻撃をためらったりもしないはずだ。


 だが、この子にその気配をまったく感じない。

 敵意と思われるものを微塵も感じることができない。


 それはこの子自身が俺を親だと認識しているからなのかもしれないが、魔物であろうと刷り込みと呼ばれる動物の学習現象を持っているものなんだろうか。


 いや、それならすべての魔物に"隷属の刻印"などを刻む必要はない。

 勉強していた時も、そういったことはラーラから一切聞いていなかった。


 少しは魔物についての知識を得たが、ペンギンの魔物については学んでない。

 とても珍しい種族か、それともここから遠くの場所から卵が運ばれたのか。

 確証はないが、もしかしたらそのどちらでもあるのかもしれないな。


 なら、この子達の種族がそういった行動を取るのか。

 それともこの子だけが特殊なのだろうか。

 答えの出ない疑問は募るばかりだ。


 知識がないことが、これほど不安になるとは思っていなかった。

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