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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十八章 心から信頼する仲間たちと共に
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まるで常識のように

 何事にもイレギュラーはつきものだ。

 完璧に見えて穴が開いているのに気づかないこともある。


 しかし、これに限って言えば当てはまらない。

 それは"捕食者"も同じではあるが、本来そうあっては困る事態が起こったことそのものに危機感を覚える女神たちだった。


 世界の管理者とは、例外を除けば一柱(ひとはしら)でなれるものではない。

 最低でも二柱(ふたはしら)はいなければ世界の維持すら困難を極めるだろう。


 だが、金髪碧眼の女神が管理する世界は違う。

 天上から、そして地上から多くの神々が見守る。


 まして彼女の強さは、ここにいる誰にも到達できない領域にいる。

 そこに穴など起きようはずもなく、凄まじいまでの結界を張り巡らせる世界に平然と送り込まれたことは、異常以外の何ものでもない最悪の事態だった。


「油断がなかったとは言い切れないわ。

 あれだけ強固な結界を張っても突破された事実は、私だけじゃなく全員が驚愕したの。

 それも私の真後ろに空間を歪めて暗殺者を送り込んだことは、今でも信じられないと断言できるほどの特質的な力だった」


 空間を歪め、何かを送り届ける。

 これは言うほど簡単ではないものの、ここにいる三柱でも可能だ。

 しかしそうしたところで、その世界の管理者に感知されるのは確実だろう。

 水面に何かが触れれば波紋が広がるように、神々の目を欺くことは不可能だ。

 そしてそれは質量が大きければ大きいほど波紋の波も高くなり、世界に何かを降り立たせるということは無造作に石を投げつけるのと同じ意味を持つ。


 こんなこと、起こりようはずもない。

 世界を管理する神が気づかないわけがない。

 まるで常識のように、そう思われていた。


「襲撃者が残したわずかな情報でその世界へ向かい、それらすべてを殲滅したわ。

 でも元凶となる存在は一切の痕跡を消し、その後の足取りを掴めなくなった」


 口惜しさを感じさせる声色で話す金髪碧眼の女神へ、ラーラリラジェイラは代弁するように言葉にした。


「エリーの世界でその痕跡を見つけたわけね」

「……えぇ、そうよ」


 先ほどエルルミウルラティールから渡された情報から察するに、それは彼女にとって耐え難いほどの激しい苦痛を伴うこととなった。


 彼女は失っている。

 大切な子の命を。

 一方的な形で。


 それがどれだけ彼女にとって最悪のことだったか、当時を思い起こす彼女の表情を見ていれば明確に分かるエルルミウルラティールとラーラリラジェイラだった。


「……エリーちゃんがその存在の分析を正確にできたのは、ずっと後。

 あの子が目を覚ます5日前のことよ。

 彼女が地表に降りられないことを逆手に取られ、地中の奥深く(・・・・・・)で着々と侵略する準備が進められていたの。

 プレデターのような強さはないことから完成するまでの実験として創られ、それが何百年もかけて大量に増え続けたみたいね」


 だが、彼女は言葉を続ける。

 いくら弱いとは言っても、その総数が十数万匹を軽く超えていると。


「連中はわずかに含まれたマナがあれば生き続け、ある一定量を蓄積させると分裂するように増殖するみたいね」

「人の子が斃せても、その数は圧倒的じゃないかしら?

 エリーの世界は本当に大丈夫なの?」


 眉をひそめながらラーラリラジェイラは答えた。

 そんなものが来たるべき時に地表へ侵攻すれば、とんでもないことになる。

 恐らくはそういった腹づもりだったことは想像に難くないが、この件に関して言えば問題ないと彼女は続けた。


「エリーちゃんのところは問題ないと思う。

 すでに対応策を検討し、優秀な仲間が討滅に向かってるそうよ。

 むしろエルルちゃんの世界のほうが遥かに厄介だわ」

「現在確認されている"プレデター"は3匹。

 どれも人里離れた場所だし、この世界にはポータルを置いているから移動も問題ないわ。

 ……けれど、"種"のほうはその総数を確認できていないの」

「そう多くないとは思うわ。

 絶対的な物理と魔法耐性なんてものを持たせるなんて、簡単じゃないもの。

 恐らくは最低2匹、最高でも4匹ってところじゃないかしら」

「……そうあってほしいわ……」


 まるで懇願するようにエルルミウルラティールは呟いた。


 その理由も理解している二柱は言葉に詰まる。

 それがどれだけ危険で厄介な存在であるのかを知る彼女たちだからこそ、口を噤んでしまった。

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