表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十八章 心から信頼する仲間たちと共に
660/700

引っかかる

 何かが引っかかる。


 真っ先にそう感じるのも仕方がないことかもしれない。

 最近は色んなことが起こりすぎていて疑心暗鬼になっているのも否めない。

 それだけの経験を同じようにしてきたエルルが突如として思い出したことも、別段不思議なことではないとも思う。


 ……それでも、このタイミングで記憶が蘇るのはどうなんだろうな。

 しかも詳しく聞けば首を傾げざるを得ない話をこの子はしている。

 矛盾にも思えることを話していると、気が付いていない様子で。


 綺麗なカフェで軽めの朝食を取りつつ話すような内容でもない。

 アンジェリーヌもエトワールも、目を丸くしていることに気が付いてないのか。


 ……どうしたんだ、エルル……。

 なんだか、らしくないぞ……。


「……レンテリア大森林の中に、家があるのか?」

「うん!

 大体7日くらいで着くと思うよ!

 だから北西に向かって進みたいの!」


 満面の笑みで答えたエルルだが、その言葉の意味をこの子は理解しているとはとても思えなかった。


 アンジェリーヌも同じことを感じていたんだろうな。

 考え込みながら言葉にするが、その話し方は戸惑いを隠せないものだった。


「レンテリア大森林の奥に家があるの?

 それもフュルステンベルクから7日も離れた場所に?

 さすがに……いえ、私が知らないだけかもしれないわね。

 エトワールはこの周辺について何か知っていないかしら?」


 訊ねられた彼女も目を丸くしていた。


 それはそうだろう。

 エルルの言葉に驚くなというほうが無茶だ。


「……森へ行く予定もありませんでしたし……。

 ですがレンテリア大森林は魔物も強く、鬱蒼(うっそう)とした森が続くと聞いています。

 見通しはそこまで悪いわけでもないそうですが、それも噂話程度の曖昧な情報だと思っていただけると恐縮です」


 そんな場所に村があるとは思えない。

 ましてや町が造られているはずもない。

 そう聞き取れる言い方に感じられた。


「大森林からエルルはデルプフェルトまで歩いて来たのか?

 なぜそんな遠くから、それもたった独りで森の中にいたんだ?」

「それ、は……わからないけど……。

 でもおうちがあるのは本当だよ!」


 焦ったように話す彼女をなだめて落ち着かせる。

 嘘を言っているとは最初から思っていない。

 ただ、俺はこう聞きたいんだよ。


「記憶違いじゃ、ないんだな?」

「うん!」


 瞳に意志の強さを感じた。

 逆に正気を保った上での発言とも思えないんだが、この子が言うんだからそれを信じればいいか。


 何もなくても、何かしらの手掛かりは見つかるかもしれないからな。


「わかった。

 それじゃあ森に進む方向でいいだろうか?」


 全員に確認を取るが、反対意見が出ることはなかった。

 それが訝しく思っていても、やはり俺と似ている思考を持つみんなだからな。

 エルルを家族と再会させたいと思う気持ちは一緒なんだな。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ