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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十七章 目覚め
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わずかな情報でも

 思ってた以上に目撃者は多かったが、決定的とも思える情報は得られずにいた。


 町中で今まさにさらわれている女性を見かければ騒ぎになるのも当然だろうし、何よりもローブから覗かせた顔が骸骨の姿をしていたらパニックになるはずだ。

 そうならなかったからといって、素直に安堵はできないが……。


 街門に近づくにつれて情報量も増える中、外からやってきた冒険者の話は有力な手掛かりになりそうだと思えた。


「すげぇ速度で北に真っすぐ向かっていたぞ。

 確かに金髪の女を両手で抱えてたが、もうひとりはローブ姿だったからな。

 暗くて顔は見えなかったし、お前が探してるやつかどうかは分からねぇが」


 その言葉を聞いた俺たちは顔を見合わせ、頷いた。


「いや、感謝する。

 酒代にでもしてくれ」


 大銀貨を1枚渡し、俺たちは合流場所の街門前まで駆けた。


「お、おい!

 曖昧な情報なんだぞ!

 情報料にしても、こいつぁ高すぎるぜ!?」


 中年冒険者は焦ったように言葉にするが、気にしなくていいと走りながら大きめの声で伝えた。


 確かにこれだけでは正確性に欠ける情報だ。

 この話を鵜呑みに捜索することはかなりのリスクも伴う。


 だがまずは、みんなとの合流を急いだ。



 *  *   



 北側の街門近くにある三差路で待機しながら情報を精査していると、左右の道からやってくる2人と3人の姿を視界に捉えた。

 彼女たちの顔色から察すると、あまりいい情報は得られなかったようだな。


「その様子だと、何かを得られたのか?」

「外から来た冒険者が、金髪の女性を両手に抱えたローブ姿のやつを見たらしい。

 町から真っすぐ北へ向かったのは確認できたが、顔までは見ていないそうだ」

「情報を信じて進むか?」


 わずかに眉を寄せながら訊ねるレヴィアだった。


 彼女の言いたいことも分かるつもりだ。

 その話ひとつで先に進めば取り返しのつかないことになりかねない。

 それにこの町を真っすぐ進むとなると、文字通りの壁にぶち当たるだろう。


「……フュルステンベルクの北方には、ギーゼブレヒト断崖があります。

 断崖から東西を隔てるようにグロースクロイツ連峰が(そび)えているのですが、そこから先は人の踏み入る領域ではないと言われ、手の付けられないほどの獰猛な魔物がひしめき合っていると聞きました」

「レヴィアの故郷はその先か?」

「いや、ここからだと北東にある険しい山々から北になるだろうな。

 うろ覚えではあるが、真北を通った記憶がない」

「町の周辺に洞窟や隠れ住めそうな場所はあるのか?」

「聞いたことはないのですが、確信は持てないです」


 リゼットは高ランク冒険者といっても南の町を拠点に活動していたし、出身は隣国だから仕方がない。


「連峰の北にはどんな魔物が生息しているんだ?」

「主にワイバーンなどの空から襲ってくるものが多いと聞きますが、これについても話に聞いた程度になるので詳細までは……」


 申し訳なさそうに答えるリゼットだが、大まかな地形以外は知らない俺が口を出せるわけもない。

 足場が悪い場所で飛行する魔物と戦うことは避けたいところだな。

 これについては正確な情報を入手したほうがいいと思えた。


「憲兵詰め所に行くか」

「ふむ、そうだな」


 *  *   


 目と鼻の先にある詰め所は、街門と隣接されるように作られている。

 恐らくはどの町でも同じような造りだと思うが、憲兵でもなければ直接来ることなんて少ないだろうな。


「随分と慌ただしいな。

 街門にいる憲兵も目撃してるはずだから、それも当然か」


 出入りを繰り返す憲兵のひとりを止めて訊ねた。


「少しいいだろうか。

 町に侵入したアンデッドと、連れ去られた女性についての話ができる人物を紹介してもらえるか?

 できれば大隊長のルッツさんがいれば話が早いんだが」

「大隊長の知り合いか?

 わずかな情報でも助かる。

 詰め所に来てくれ」


 焦りながらも対応してくれた憲兵に感謝を伝え、俺たちは詰め所へ足を進めた。

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