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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第三章 掛け替えのないもの
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どうすんだ

 ギルドを出ると、辺りはすっかり夜の闇が一面を覆っていた。

 とはいえそれほど暗く感じないのは、月の光が優しく包み込んでいるからか。


 浅い林で野営している時にも気になっていたが、やはりこの世界の星と月はとても明るいように思えた。

 街灯はあるといっても、都心部のような目にくる眩しさを感じさせない。

 とても優しい灯りでどことなく幻想的な情景に、思わず感嘆のため息がもれる。


 空気も淀んでいないので、夜空もはっきりと見えたことも大きいのだろう。

 そんなところもこの世界の魅力のひとつだと、俺は素直に思えた。


「すっかり夜になっちまったな」

「そうだな。さて、これからどうする?」

「今後のことか?」

「ああ。俺達は明日、迷宮都市を目指す。

 トーヤはどうするのか、聞いておこうと思ってな」


 随分と急ではあるが、元々は捕縛報酬をもらうために残っていたと言っていたし、例のスキル効果を試したいんだろうことはふたりの様子から把握できた。


「ま、折角のスキルだし、効果を試さにゃいられないよな」

「そうですね。いったいどれほどのものなのか、興味が尽きません」


 思いのほかライナーが乗り気なことに意外性を感じていたが、それだけの激レアスキルなのも頷ける。


 ……まぁ、それほどの効果があるとは俺には思えない。

 正直なところ、うさんくささが凄まじいからな。

 だがひとつ気になることがある。


「いいのか? 調査依頼で慎ましく冒険を続けたいと言っていたのに」


 そう言葉にしていたエックハルトに訊ねる。

 迷宮都市に行くとは、つまるところダンジョンに潜るという意味だ。

 それは彼が望む冒険とは違うように思えてならないが、彼は笑顔で答えた。


「"迷宮内調査"なので、大丈夫ですよ」

「……そういうものなんだろうか」


 正直、俺にはよく分からない考えだ。

 まぁそれで納得できるなら、俺がとやかく言うことでもないんだが。


 調査依頼とはとても思えないような、殺伐としたものを連想しているが、実際には俺が想像しているような世界ではないらしい。


「ダンジョンには帰還アイテムってのがあってな。

 ボス戦でも使えるようなもんで、危険を感じたら使って逃げられるんだよ。

 魔物の数も極端に多いわけじゃないし、ダンジョン用ポーションってのもある。

 まぁそれでも引き際のわからないやつが命を落とす場所なんだが、強くなるにはうってつけの場所ってことだな!」

「いい話を聞いた。

 つまり実力を上げるには最高の修練場所ってことか」

「まぁ、そう言われているな。

 フランツが言ったように帰還アイテムってのは珍しいものじゃない。

 階層で難易度が変わっていくから、自分達の強さに合った場所で修練ができる」

「稀に魔導具も手に入りますし、一攫千金を夢見た冒険者が集う場所なんですよ」

「私としてはお金よりも、誰もが到達したことのない階層に思いを馳せています。

 きっとそこには、この世界に生きる人が想像もしないような世界が広がっているのかもしれません」


 目を輝かせて言葉にするエックハルトの様子から、彼もやはり冒険者に向いているのだろうと俺には思えた。

 そんなところもあって、彼は自由気ままな冒険を続けているのかもしれないな。


「で? トーヤはどうすんだ?

 ラーラさんちでしばらく勉強か?」

「そうだな。

 俺には知らないことが多すぎる。

 もうしばらくはラーラさんに頼ろうと思う。

 ある程度学んだら、魔物の卵を育てるための場所探しだな」

「……そうか」


 星の輝く空の下で寂しそうな雰囲気に包まれるが、感傷的になれる余裕はない。

 俺は彼らに声をかけ、真剣な表情で言葉にした。


「みんなに大切な話がある」

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