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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十五章 笑顔で歩いて行けるように
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不幸なことなんだから

「それで、トーヤたちはこれからどうするんだ?」


 どことなく俺が出そうとしている答えも分かってるんだろうな。

 そういった表情が見て取れるディートリヒだった。


「そうだな。

 まずはクラウディアの強さを確認して、適性の装備である程度鍛えようと思う。

 俺たちも納得できるくらいまでは強くなれたし、戦わなくてもいいんだけどな」

「私は主さまをお守りしたく思います」

「……ずっとこんな感じなんだよ……」

「な、なるほど……」


 ……いま、"女難の相"ってのは面倒なんだなって顔をされたな……。

 あげられるならフランツに渡したいんだが、そんなことができるわけもない。

 クラウディアがそれを望んでいる以上、否定することはできないが。


「エルルの家族も見つけないといけないし、強力な媒体も必要だ。

 最終的には元いた世界への帰還を目指してはいるんだが……。

 ……やはり意志は変わらないんだよな?」


 ちらりと家族へ視線を向けるも、同じ答えが返ってきた。

 まぁ、フラヴィは嫌がらなければ連れていくつもりだったが、まさかブランシェだけじゃなくてレヴィアやリージェまで同意見だとは思っていなかった。


「ごしゅじんが行くところなら、アタシはどこでも行くよ」

「うむ。

 我はこの世界に未練を感じていない。

 むしろ(ぬし)と離れることのほうが後悔するだろうな」

「私も同意見です。

 そもそも私がどういった存在なのかも正確には理解していませんが、別の世界に行けるのならご一緒させていただきたいと思います」

「あまりいい世界でもないんだが……」


 身分証も何とかしないといけないし、連れて行くとなれば相当の覚悟が必要だ。

 ……しかし、身分を証明するものをゼロから作ることなんて、できるのか?

 そういったことも含めて、世界を越える前にしっかりと思いついておかないといけないな。


 問題はリゼットとクラウディアだが、ふたりは家族がいるからな。

 さすがに連れて行きたいとは思えないんだが……。


「私にはその覚悟がまだありません。

 ですが、必ず答えを見つけます」

「そうですね。

 せめて一言伝えてから、主さまとご一緒したいです」


 ……ついてくる気なのか、クラウディアは……。


「俺としては、家族と別れさせることは避けたいんだ。

 それはきっと"先立つこと"と同じくらいの親不孝になる。

 だから、しっかり考えた上で答えを出してほしい」


 とても大切なことだからな。

 人によって考え方も価値観も違う。

 それに……。


「もう二度と会えなくなる可能性が高いんだ。

 そう簡単には答えを出してほしくないんだよ」


 ……会いたいのに会えないってのは、それだけで不幸なことなんだから。


「……トーヤ君」

「あぁ、悪い。

 なんでもないよ、ラーラさん」


 最近、どうにも家族のことを思い出す機会が多い。

 人に話せば"それはホームシックだ"と言われるんだろうが、俺の場合はもう二度と会えないからな。

 それこそ、命が尽きた先にあると聞く場所でなければ会えないだろう。


 ……だからなんだろうな。

 どうしようもないと分かっていても、焦がれるように想ってしまうのは。


 俺には新しい家族がいてくれるし、この世界にもそう思える人たちができた。

 それでも、こうして時々思い浮かべるようになるのは、俺の心が弱いからなのかもしれない。



 この世界に来てから随分と経ったが、"会いたい"と思う気持ちは強くなっている気がする。


 今の俺にはどうしようもないことだし、たとえ日本に帰ったとしても虚しくなるだけだからな。

 あまり考えないようにしよう。

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