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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十五章 笑顔で歩いて行けるように
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噂に違わぬ男

「そういえば、みんなは噂の"攻略組"と84階層にいたって聞いたが」


 これはルーナの情報によるものだが、どうやら間違いではなかったようだ。

 ランクAに昇格した時にテレーゼさんとも会っていたようだし、本当に最前線まで辿り着いたんだな……。


 誇らしげに語るフランツは右こぶしを握り込みながら、自信たっぷりに答えた。


「おうよ!

 あれから俺たちは自覚できるくらい強くなってるからな!

 迷宮もサクサク攻略できたぜ!」

「それでも、"攻略組"に入ったたわけではないんですよ。

 目指している場所が同じだったことや、あまりにも魔物の数が多かったので協力関係にはありましたが」


 ライナーの言うように、89階層までは確かに異常なほど魔物が溢れていた。

 もし仮に迷宮そのものを"調整"している者がいるのなら、ああいった事態にはならないだろうとすら思えるほどの総数だった。


「噂には聞いてたけどよ、あんなに魔物が多いのはさすがに反則だろ」

「何に対しての反則なのかは置いとくとして、聞いた限りじゃ攻略はできてなさそうだな」

「……その言い方から察すると、トーヤたちは先に行けたんだな……。

 ともあれ、ここ2週間は84階層に行って戻ってを繰り返してたよ」


 まさかあれが正規の状態だとは、とてもではないが思えない。

 恐らくは何らかの要因があって魔物が溢れ返っているんだろうな。

 それが人為的なものなのか、それとも超常的なものなのかは分からないが。


「みんなは迷宮攻略を目指していたのか?

 随分と話に熱が入っているように思えるが」

「いや、そういうわけじゃないんだ。

 50階層を俺たち1チームで突破できて、どこまで行けるか興味が湧いてな。

 そこからは1日1フロア、70階層からは2日で1フロアを目安に次の階層を目指すようになってたんだ」


 もちろん無茶なことはしなかったらしい。

 出遭った魔物を倒しながら進んでいたこともあって、技術的にも精神的にも随分と研鑽を積めたようだ。


「80階層を突破した日、エントランスロビーで美味いものを食いながら祝杯を挙げていたんだが、ある男に声をかけられてな。

 かなり悩んで話し合いにも時間をかけたんだが、男の言葉に興味が出たこともあって同行を決めたんだよ」

「興味が出る言葉って、どんなものだったんだ?」

「"俺たちと一緒に、誰もが見たことのない景色をいちばんに見てみないか"」


 なるほど。

 確かに興味をそそられる言葉だ。

 そのたった一文に、男の性格がはっきりと表れている。

 噂に違わぬ男のようで安心したし、だからこそディートリヒたちは同行したことも理解できた。


 ……少し申し訳なく思えるが、子供たちの安全にも深く関わっていたし、納得してもらおう。


「特に決まり事もなかったし、実質レイドは組むがやるべきことはそれぞれのパーティーが確実に眼前の魔物を倒し続けるくらいだったからな。

 必要に応じてレオンが指示を出すんだが、これがものすごく的確でな。

 "正直、勉強になった"って、心から思える経験をさせてもらえたよ」


 レオンハルト・ミュンヒハウゼン。

 実質突破不可能とすら言われている83階層を切り開いたことで、その名を歴史に刻み込んだ超一流の冒険者だ。

 現在登録されたどの冒険者よりも強いと噂される"世界最強の冒険者"と同業者に認められた男性。


 悪逆を許さず弱きを助けるその精神は、まさに冒険譚で語り継がれる"勇者"そのもので、持ち前のポジティブな思考から攻略は絶望的だとさえ言われる83階層も、仲間となら突破できると信じて突き進み、ついに偉業を成し遂げた。


 それに驕ることなく研鑽を積み続け、いずれはすべての階層を制覇して迷宮を完全攻略するのではないだろうかと多くの者から期待を込めて言われている"攻略組"のリーダーだ。


「そんな噂の男とみんなが一緒だとは、さすがに思ってなかったよ……」

「俺たちだって名高いレオンと行動するなんて、想像すらしてなかったぜ。

 ただ拍子抜けっつうか、噂と違って俺様で傲慢なやつだと思ってたんだけどよ、実際は物腰が柔らかな優男だったのにはびっくりしたよな」

「そうですね。

 失礼になりますが、とても戦えるような方だとは思えなかったです」

「……それは自分に跳ね返ってくる言葉だぞ、ライナー」

「ディートの言う通りだな!

 見たことねぇなら今度鏡を見せてやるぜ!

 まぁ、冗談は置いとくとしても、世の中どんなやつが強いのかなんてのは分かんないもんだよな」

「違いない」


 しみじみと言葉にするディートリヒとフランツだが、苦笑いしか出ないライナーとエックハルトも変わっていないようだ。


 まるで出逢った頃のような気持ちを彷彿とさせた。

 しかし、その話の中に俺も含まれているんだろうな。

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