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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第三章 掛け替えのないもの
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仲良く

 ギルドマスターの部屋に入ると、すぐ声をかけられた。


「二日ぶりじゃの、トーヤ殿」

「……ここでもかよ……」

「うむ? 何の話かの?」

「いや、何でもない」


 執務机からこちらへとやってくる彼に、フランツは思わず言葉にした。

 とはいえ、こうも連続で同じような扱いをされれば言いたくもなるだろう。


 来客用のソファーへ静かに腰をかけるローベルトは、机から持ってきたトレイをテーブルに置き、一息ついて話した。


「……はぁ。落ち着くのぅ……。

 おうちに持って帰りたいほどふかふかじゃのぅ……」

「業務上横領罪で告発して檻の中で号泣させますよ?」

「相変わらず凍てつく言葉が鋭い速度で飛んでくるのぅ……。

 ワシ、そろそろ全身氷漬けになっちゃいそうだわい……」

「中々素敵な作品が完成しそうで何よりです。

 ぜひ玄関口に飾りましょう。入荷はいつ頃になりますか?」

「……もしかしなくても、ワシ、嫌われとるのかの……」

「そんなことはありません。

 とても良い上司だと他職員からの評判も上々です」

「……そんな態度、誰からも取ってくれた記憶がないんじゃが……。

 それに、くーちゃんはそこに含まれてなさそうじゃの……」

「その呼び名をやめて下されば、1ミリ程度は好感度が上昇するかと」

「……翌朝の枕は涙で重くなってそうだの……」

「それでは失礼致します」

「うむ。引き続き憲兵と協力し、盗賊どもの聴取を継続。

 白銀剣の入手経路と時期は徹底して詰問するように。

 共犯者の存在が判明すれば、最優先でこちらへ報告を」

「かしこまりました」


 このやり取りが毎回のように行われていることだけは理解できた。

 どこか寂しそうにため息をついたローベルトは、トレイの上に置かれた袋から金を取り出し、5人分に分け始めながら言葉にした。


「それで報酬じゃが、仲良くわけわけでいいのかの?」

「あぁ、それで構わないぞ。

 ……ただ、その量には疑問が残るが……」

「ふむ。言いたいことは理解できるつもりじゃが、まずはわけわけさせなさい」


 金色の硬貨を上に積んでいく作業を5人分繰り返すローベルト。

 どこか積み木みたいにも思えてくるが、問題はそこじゃないのは俺でも分かる。

 さてどうするべきかと考えていると、金貨を積み終えた彼は話し始めた。


「よし、綺麗に積めたわい。

 これがほんとの"積立金"じゃの」

「……そろそろ突っ込んでいいか、ローベルトさん」

「やれやれ。お前さんはいつもせっかちさんじゃの、ディートリヒ。

 そんなんじゃ可愛いお嫁さんのひとりやふたりは逃げるぞい」

「……ふたりはいらないし、余計なお世話だよ」

「ふむ。気になる子がいないなら、職員のドロテーアはどうじゃの?

 中々の器量良しで可愛げもある。そこそこドライな一面もあるがいい子じゃよ」

「いや、俺はまだ結婚するつもりはないぞ。

 大体俺が所帯を持ったら、こいつらどうするんだよ」

「そうだぞ、ローベルトさん。

 俺らは"幸運"持ちになったんだ。

 俺達の冒険はこれからだって時に、なんて話を持って来るんだよ」


 盛大な打ち切りフラグで大変なことになりそうな話をしているな。

 とは、さすがに言葉にしても意味はないか。


 さて、冗談も程々にして。

 目の前に積まれている金貨をどうすればいいんだろうな。

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