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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十四章 空が落ちる日
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隔絶された領域

 どこを見回しても廃墟。

 ゴミを漁る野良犬とカラスばかりの風景が続く。

 ちらほらと気配を感じるが、どれもこれも救いようのないクズばかり。


 どうしようもないゴミ溜めだ。


 ここには悪党しかしない。

 アタシの知る限り、まともな人間はいない場所だ。

 転がるジジイでさえ、おぞましい気配を垂れ流している。


 そんな中を5人の男どもは歩き続ける。

 掃き溜めに騎士鎧は何とも言えない空気を醸し出し、ちらりちらりと建物内から覗き見る不快な感覚が途切れることはなかった。


 ……ったく。

 連中に気づかれずに行動するのは問題ないが、その他大勢が面倒ね。

 否応なく遠回りをさせられるのも、そろそろ飽きてきた。

 いっそ街ごと燃やして消毒したほうが早いわね。



 この辺りに生息している連中も、恐らくは何らかの犯罪を犯した逃亡者だ。

 そういった気配をその身に纏っているし、瞳の色も濁っている者が多い。


 2大犯罪組織に属さず、けれど表の世界には戻れず。

 ただただゴミを漁りながら、その日を生きるだけの中途半端な悪党の視線を掻い潜り、足を進め続けた。


 ここに軽犯罪者はいない。

 だからこそ本気で思う。

 こんな場所、さっさと潰せばいいと。


 まるで腐肉のような臭気が立ち込めている錯覚を感じる。

 巨大な都市であれば、必ず似たような"闇"が生まれる。


 暗黒街とはよく言ったもんだ。

 ここは表の世界とは隔絶された領域だ。


 教会が謳う"地獄"ってのは、きっとこういう世界ね。



 男たちの足が止まったことに、眉をぴくりと動かした。

 建造物の陰から確認できたのは、ひとつの廃屋。


 周囲に人影はない。

 建物の中には……ひとりいるわね……。


 護衛者を外に残し、馬鹿男だけ入っていくのを確認した。

 4人の男たちは周囲を警戒してるところを見ると、当たりを引いたみたいだ。


 2世帯が暮らせるほどの大きさだが、2階がすでに朽ちている。

 上に向かうとは思えないし、気配も1階中央にいるようだ。


 騎士たちを避けるように側面へ周る。

 手頃な窓から入り、乱雑に転がる朽ちた家具を踏まないように廊下へ向かった。

 廊下の長さと建造物の大きさから大体の間取りを頭に入れ、中央の部屋からすぐに離脱できるような部屋へ入った。


 板を打ち付けてあるが、ここならばすぐに対処できる。

 意識を集中して耳を澄ませるも、聞こえてきたのは苛立つ音だった。


「貴様らにいくら出資したと思っている!」

「そう………さらず…。

 ………には………世話に……ま……。

 あなたとも、友好…な関…を継…したいところ…すね」

「だったら結果を示せ!」


 ところどころ聞こえないが、重く静かに発せられる特有の話し方。

 まるで存在そのものを感じさせないかのような静かな気配。


 ……間違いない。

 コイツは本物(・・)だ……。


 対象はひとり。

 推定25歳前後の男。

 声の質から身長170はありそうか。


「…をしろと?

 その男の…でも持ち…れと?」

「殺すのは最後だ!

 まずは黒髪のガキを狙え!

 お前が無能じゃないならまずは結果を出せ!」


 ……穏やかじゃないわね……。

 これ以上ヴァイスを怒らせてほしくないんだけど……。


「……やれやれ、困った方だ……。

 まさか…いねこを……込む…んて……」


 ……イネコ?

 なんのこと――ッ!!


 ぞくりとした気配を背中越しに感じ、体を左によじる。

 肩に熱を感じながら反射的にダガーで応戦するも、そこには誰もいなかった。


 しかし確かな衝撃が残り、胸の高さまで構えていた肘から雫がこぼれ落ちた。

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