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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十四章 空が落ちる日
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この世の終わり

「それじゃ、みんなのところに戻ってるよ」

「はい。

 私もなるべく早めに合流しますね」


 リーゼルっちを見ながら手で応えるトーヤっちは、傍から見れば旦那様っすね。


 いいっすねぇ、家族水入らずでお食事なんて。

 アタシもバルヒェットに戻って、フィリっちとごはん食べたくなってきたっす。


 まぁ、まだまだやらなきゃならないオシゴトが残ってるっすからね。

 そんな余裕もない事態に直面してるし、おうちに帰るのは先になりそうっすね。


 ……いや、それもこれも、すべてはあの馬鹿男のせいじゃね?

 いっそぶん殴っちゃえば万事解決して、すぐに帰郷の旅を満喫できるんじゃ?


「……ダメよ、ルーナ」

「なはは!

 悪いことは何も考えてないっすよ!

 ただ、"あいつぶっ飛ばしたいな"とは思ったっすけど、ヴァイスっちも我慢したんすからこっちも最大限の努力をするっすよ!」


 ジト目でこちらを見られてるっすね。

 でもアタシには効かないっすよー。


 さっさと情報を吐かせれば済むような案件だと思うんすけど、そう上が判断するならそれに従うだけっす。

 ……効率的だとは思えないっすけどね。


「あの馬鹿貴族をボコりたいけど、今は(・・)我慢っす」

「……まだ諦めてなかったのね」

「そりゃそうっすよ。

 あんなの野放しにしてたら、この国で何するか分かったもんじゃないっす」

「……あの方は、どこか血の匂いが立ち込めていました」

「あー、あれだけ濃ければデルフィっちでも気づくっすよね。

 ありゃ殺戮者(・・・)特有のニオイっすよ。

 瞳の色も混濁してたのに気がついたっすか?

 ああいった奴は殺人に快楽を覚える危険な連中っす。

 さっさとこの世からご退場願うのがいちばん――」


 言葉を途切れさせるほどの威圧に打ちのめされ、冷や汗が吹き出る。

 ぞくりとするどころではない凄まじい衝撃が全身を激しく貫いた。


 ……考えが甘かった。

 トーヤっちは下にいる家族と会いに戻ったんだ。

 そこに問題が発生する可能性を考えもしなかったことに、我ながら驚いた。

 これほど単純な発想すらできないなんて、アタシも焼きが回ったもんだ。


 へたり込まされたことにも驚愕だが、相手がトーヤっちだけにそれも当然だ。

 これだけ修行を積んでも威圧で体が動けないなんて、本気のお師匠様を相手にしているようだと血の気が引いた。


「こ、これは、いったい……」

「ものすごい圧で、とても立っていられません……」

「……この気配は……まさか……」

「間違いないっす!!

 トーヤっちが激怒してるっす!!」


 あの馬鹿貴族!! 

 トーヤっちを怒らせるとか何考えてるんだ!!


 その理由も容易に想像がつく!!

 フラヴィちゃんに手を出しやがった!!



 ……さ、最悪の事態だ。

 これではすべての計画が水に流れかねない。

 自分が言うのもなんだが、相手を殺してしまえばその先は見えなくなる。

 せめてもの救いは、これが"殺意"ではないことか。


 だが、そんなことで安心など微塵もできない。

 これは確実に怒りを抑えずに放出し続けている。


 信じられないほどに凄まじい威圧の中で立てる者は、この場にはいない。

 止めに行くこともトーヤっちが止まることも、もうないだろう。


「もう終わりっす……。

 この世の終わりっす……」



 *  *   



「――ってのが、ここで起きた事の顛末っす。

 何か質問や疑問があれば伺うっすよ」

「……本当に、申し訳ない……」


 ただただ頭を下げて平謝りすることしか、俺にはできなかった。

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