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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十四章 空が落ちる日
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できるだけ静かに

 だが、今の話から貴族の男がどういったやつなのかも見えた。

 であれば御しやすく、程度の低いやつの可能性も捨てきれなくなってきたな。


《我々はすでに問題の男と接触している。

 その際にヴァイス殿、正確には"ある冒険者"としか伝えていないが、指輪を持ったまま迷宮に潜ったと伝えてある》


「つまり、貴族の男がバウムガルテンに滞在させられている(・・・・・・・)理由が俺だと伝えたんですね」


《察しが早くて助かるよ。

 そんな彼は随分と怒り心頭のご様子でね。

 ギルドマスターの部屋にある来客用のテーブルを何度も蹴り込む喜劇(・・)を見せてもらえたと報告を受けた》


 彼の話から察しなくても、俺に意識が向いてるのは間違いなさそうだ。


 だがこれで男の動きを随分と制限できるかもしれない。

 どうやら直情的な馬鹿みたいだし、得られる情報も多いだろう。


 そこにルーナが流した情報を受け取れば、彼女の言うように激高することも確実だと思えたが、ひとつ確認しておくべきだな。


「犯罪組織と関わりを持たなくてもかまいませんか?」

「えぇ、大丈夫よ。

 これはヴァイスさんを外した上で作戦を決めています。

 あなたは交渉の席で指輪を返還することと、暗殺者の捕縛を優先してください」

「わかりました」


 2つの巨大犯罪組織と揉めることは、さすがに避けたいところだ。

 俺たちの目的は迷宮都市だけじゃないし、エルルの家族を探さないといけない。

 それ以外にも叶えたいことや、元の世界への帰還する方法も見つける必要があるし、バウムガルテンにずっといるのは現実的にも難しい。


 下手をすれば組織から逃げ出した犯罪者に狙われかねない。

 強くなったとはいえ、できるだけ静かに旅を続けたいからな。


「お貴族サマがそのルートを選ぶとは思えませんが、下水道や隠し通路のようなものから町の外へ逃げることも考えられるのでは?

 これほどの大都市ともなれば、いくらでも逃げ道はあるように思えるのですが」

「それも含め、ルーナに監視させる予定となっています。

 すべての通路を封鎖することはさすがにできませんが、町の外から馬車と合流するまでの移動はそれなりに時間がかかります」

「その場合はアタシが可能な限り足止め、もしくは単独で捕縛するっすよ。

 ただし対処できないような数の暗殺者が合流した場合は退却させてもらうっす」


 なるほど。

 それ以外はギルドが責任を持って対処するって顔をしてるな。

 確実に安全とは言いがたいが、それは俺にも言えることだ。


 貴族の男が逃げおおせ、かつ暗殺者と合流した場合は俺が出向く形になりそうだから、その覚悟もしておいたほうがいいだろうな。


《トーヤ殿には交渉の場で貴族へ指輪を返してもらう予定だが、その際はなるべく穏便に事を済ませて欲しい》


「相手に警戒をさせずに"次の一手を打たせる"、ということですね」


《その通りだよ》


「さっきも言ったように、連中の仲間が何人いるのかすら掴んでいないんすよ。

 あいつら、偉そうに最高級宿と最高級宝飾店、最高級レストランを偉そうに行ったり来たりしてるだけの偉そうな勘違い馬鹿野郎どもっす!」


 "偉そう"が3回入ってたな……。

 彼女からすると、相当イラつくタイプのようだ。


 どうやらその苛立ちは収まる気配がなかった。


「アタシ個人の行動が許されるんなら、ぼっこぼこにした上で中央大広場に1週間飾ったあと、可愛いピンク色のリボンつきで本国に強制送還してやるっす!

 ボコれば今よりもいい顔になることは、アタシが補償するっすよ!

 なんなら捕まえたあと、無料でボコるサービスをいくらでもつけるっす!」


 右手で何かを掴むようにしながら、ぱきぽきと音を鳴らすルーナだった。


 主観で話をしすぎているが、言いたくなる気持ちは分からなくもない。

 そんな男をこれまで張り込み続けた彼女の精神的苦痛を思えば同情もする。

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