魔法属性
タオル類は一般の物を使うとして、ある事を思い出した俺はラーラに訊ねた。
「生活魔法を覚えたいんだが、どうすればいい?」
「確かにあれは覚えておくとすごく便利だからお薦めよ。
私が教えてあげられるからそれもお勉強しましょうね。
折角だし、まずはトーヤ君の持つ属性を確認してみる?」
「確認ってどうやるんだ?」
「なんて言葉にすればいいんだろうな。
属性ってのは子供の頃に自然と覚えるものだからなぁ」
「そうなのよねぇ。
遊び感覚で子供が覚えちゃうから、怪我とかも多いのよね」
限度を知らずに力いっぱい魔力を使う子が医療施設に運び込まれるらしい。
この世界ではよくあることだとラーラは笑いながら話すが、俺にはかなり衝撃的に思えた。
この世界の住人は自分が持つ属性を子供の頃に自然と見つけてしまうのだとか。
念じれば出る類のとても簡単なものらしいので、俺も試してみた。
「…………出ないな」
「んぁ? おかしいな。普通は何か出るはずなんだが……」
「何かって、具体的にどんなものなんだ?」
「そうね。たとえば火とか水、砂や土、風とかが一般的かしら。
どれもがとても小さいものだし、見えにくいこともあるんだけど……。
どうやらトーヤ君からは何も出ていないみたいね」
「となると、俺には魔法の才能がないってことか」
「それはないと思いますよ。
トーヤさんは魔力もありますし、MPも10という初期値ですからとても大きい容量をお持ちです。
魔法適正がないとは私にはとても思えません」
エックハルトは断言するが、実際に何も出ないと少し不安になる。
色々と試してみるが、やはり魔法と思われるものが出ることはなかった。
「じゃあ、トーヤ君の魔力属性を調べてみましょうか」
「調べるって、そんなことできるのかよ」
「もちろんよ、ふーちゃん。
一応ギルドには属性を確認できる専用の魔導具もあるはずなんだけど、それと同じ効果を持つ簡易魔導具が一流の魔導具屋にはあるのよ。
本来は未知の魔導具が持つ属性を調べるためのものなんだけど、それを使えばトーヤ君の属性も分かると思うから持ってくるわね」
ラーラは店の奥へと向かい、2分ほどで何かを持ってきた。
台座の上に乗る水晶でできた大きな透明な玉だった。
重々しい音を鳴らしながらカウンターに置く。
「よい、しょっと。
さてさてトーヤ君、これが属性を確認できるスゴアイテム、"みえーる君"よ!」
「……なんだよその名前……」
「私がいま決めたわ!」
「…………そ、そうか……」
白い目で見つめて答えたフランツだったが、俺もきっと同じような表情をしているんじゃないだろうか。
それにしても、胸を張って断言されると、えも言われぬ説得力を感じるな……。
「それじゃトーヤ君、これの上に手をかざしてみて」
「……こうか?」
「そうそう、そのままねー」
確認するように水晶玉を覗き込むラーラ。
その中央部に小さく灯る黒紫色の光。
ふむふむと言葉にした彼女は、真剣な面持ちで答えた。
「あなたは並外れた天賦の才に恵まれ、認識力や直観力も人一倍優れています。
想像力がとても豊かなロマンチストで繊細なあなたは、人から命令や強制されるのを極端に嫌い、大切にしている人や物を傷付けられることに強い嫌悪感を抱き、時にはそういった連中を実力で排除しようと試みる傾向があるようね。
人を動かすことや教えることに長けている反面、明るさや素直さが少々欠けている一面も持ち合わせた大人びた人で、子供っぽいところを強く見せる人や、礼儀を知らずに我を通しすぎる人に苛立ちを覚えるみたい」
無言でこちらに視線を向けるディートリヒ達。
"どうなんだ"という彼らが放つ無言の問いかけに俺は答えた。
「それはただの占いだ」