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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第一章 はじまりは突然に
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人それぞれ

 そんなものなんだろうか。


 俺には悪人の気持ちなんて興味もないし、知りたくもない。

 きっと聞いたところで理解なんてできないだろう。


 それでも、そう違いがないかもしれないと言葉にした彼の意見に、俺は否定することもできなかった。


 例えるなら、異常と正常の境界線だろうか。

 だがそんなもの、誰がどうやって決めるんだ?


 線引きなんて誰にもできるはずがない。

 国境線が視認できないように、それらは心の奥底には確かに存在していて、いつ現れるかも分からない。

 そんな、とても曖昧なものでしかないのかもしれない。


「……気をつけないといけないな」

「そう思えるトーヤだからこそ、綺麗な瞳をしてるんだよ」


 ぽつりと言葉に出てしまったものに笑顔で答えるディートリヒ。

 それはそのまま彼に返せるものだと、俺は素直に思えた。


 最初に出会えた人物が彼で良かったと感じる。

 世界ってのはそんな風にできているのかもしれないな。

 もちろん、たまたまってことなんだろうけど。

 そう考えた方が、楽しく思える気がするんだよな。


「お、やっと笑ったな。

 まぁ、いきなり続きで大変なのは分かるよ。

 でも人間笑ってないと、いいことも見逃すからな」

「確かにそうですね」

「だろ?」


 笑い合うことに清々しさを感じる。

 不思議な魅力を持っているんだな、この人は。


「要は、人それぞれってことだな。

 人それぞれに違った想いがあって、馬が合う者同士が自然と集まることもあるし、物凄い反発をすることだってある。戦争が起こる理由も大概は利権が絡むんだろうが、そんな"譲れないもの"も要因のひとつなんだろうな。

 なら、自分なりに楽しまなきゃ人生損だと思うんだ、俺は。

 そんな似たような考えを持つ連中で集まってるんだよ、俺達は」

「俺達?」

「あぁ。ここから5分くらい歩いた場所で野営の準備をしてるよ。

 俺達はチームを組んでる冒険者だ。依頼受けて、冒険して飯食って。

 自由気ままに仲間と毎日馬鹿やってるよ」

「……自由気ままに、か」

「ん? なんだ?」

「いえ、ディートリヒさんが"いい人"だってことは、よく分かりました」

「よ、よせよ、恥ずかしいだろ。俺は自由を謳歌してるだけなんだよっ」


 そう思えるだけで十分に善人ですよ、あなたは。

 きっと仲間達もそんな人達なのがよく分かります。


 俺は恵まれてるな。

 知らない世界へ飛ばされた先で、あなたのような人に会えるなんて。


「まぁ、ここでずっと立ち話ってのもなんだな。

 仲間達と合流しようと思うだが、とりあえずトーヤも来いよ。

 水や食い物もあるし、まだ色々と話をした方がいいと思うからな」

「そうですね。じゃあ、お言葉に甘えて――」


 悪意に気がつき、視線をそちらに向ける。


 ここから直線に見える茂みが揺れ、現れた3つの影。

 100メートルは離れているが、はっきりとその姿を視認した。

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