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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十三章 大切な家族のために
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可能かどうか

 32階層に入ると、気配の変化を感じた。

 いや、むしろこれが本来だと言えるだろうか。


 子供たちもそれを察していた。

 随分と気配察知が上達してるみたいだな。


「……敵意を感じるね、トーヤ」

「あぁ、ここから出るのが通常のスライムのようだな」


 気を引き締める子供たちに続いて進み、敵を視界に捉える。

 周囲を探っても1匹だけしか気配を感じなかった。

 恐らく先に進むと魔物の数も増えるんだろう。


「今度のは、ぽよんぽよん飛んでるの」


 どこか楽しそうにフラヴィは言葉にした。

 だが飛ぶというよりは、"弾む"だな、あれは。


 中々不思議な光景に見えなくもないが、あれはあれで厄介か。

 力の強弱で弾み方やタイミングも変えてくるかもしれない。


 とはいえ、スライムはスライム。

 突進くらいしか気をつけるべき攻撃はない。

 噛み付いたり溶かしたりなんてのはしないらしいし、今回のスライムは毒もない一般的な魔物みたいだから、それほど危険はないだろう。


 それでも突進をまともにくらえば、並みの冒険者でも転がされるくらいの衝撃はあるそうだから気をつけるべきだな。

 しかし、動き方は個性的でも、その速度は遅いと言えるほどだ。

 今の子供たちなら避けることは問題にもならない。


 フラヴィもエルルも、スライムは危うくなく倒せる。

 たとえインヴァリデイトダガーを使わなくても、フラヴィはショートソードを使えばいいだけだし、魔法耐性が高くない相手はエルルの敵じゃない。


 厄介なのはブランシェか。

 剣術は素人だから、フラヴィのように片手剣を扱えない。

 それにあれだけ動き回る相手に体を打ち抜くような衝撃を与えなければ倒せないだろうし、その技術を体得するのはかなり難しいはずだ。


 今のブランシェに可能かどうか。

 それがこの階層での課題だな。


「んじゃ、ひとりずつ倒そっか?」

「うんっ」

「そうだね、あたしもそれでいいよ!」


 まさかブランシェから提案するとは思っていなかった。

 単独撃破は修練にもいいが、さすがにブランシェには難しいと思うが。


 ……もしかして自信があるのか?

 ゴーレム以上に動き回る相手なんだが……。


 戦う順番を仲良く話し合いで決めた3人。

 フラヴィ、エルル、ブランシェの順で落ち着いたようだ。

 ショートソードをインベントリから取り出し、フラヴィに渡す。


「ありがとう、パパ」

「あらゆる可能性を想定して行動しないと危ないよ」

「うん!」


 満面の笑みで答えるフラヴィ。

 スライムとはいえ、この子は油断したりしないはず。

 相手を見下すような子なんてここにはいないが、それでも万が一の行動に備えて戦うのは早いうちから身につけておいたほうがいい。

 そんな場面に遭遇した場合、対処できずに大怪我をするかもしれないからな。



 疾風のように駆けるフラヴィ。


 本当にブランシェと同等の速度まで到達している。

 どうやったらあの体系でそれほどの速度が出せるのかは、考えるだけ無駄か。

 それを言うなら、細腕のブランシェが槌を使って大地を揺るがした攻撃にこそ首を傾げざるをえなくなる。


 すべては魔物の身体能力が関係しているんだろう。

 それ以外の答えなんて俺には出ないし、恐らくはそれが正解だとも思う。


 深く考えすぎれば疲れるだけだと学んでいるからな。

 そういう世界の常識なんだろう、とでも思っているだけで十分かもしれないな。


 空中に弾んだスライムを一瞬で貫くフラヴィ。

 肩、腰、腕、手首、足のすべてが使われた刺突だ。

 見事としか言いようのない、素晴らしい突きだった。


 これほどの完成度なら、武器次第で岩くらいなら貫けるかもしれないな。

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