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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十三章 大切な家族のために
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完璧に見えて

 隠し球を見切られ、しょぼくれるエルル。

 しかし今回見せた行動は、"避"の対応策としては十分だ。

 少ないながらも存在する弱点について話すにはいい頃合か。


「"避"は無敵じゃない。

 中位技に置かれたこの技術にも弱点はあるんだ。

 その中のひとつがエルルの見せた魔法になる」

「……どういうこと?

 あたしは奇をてらった使い方で足元を……」


 疑問に思いながらも訊ねるエルル。

 だがこの子は同時に、その弱点を見つけ出したようだ。


 やはりこの子は頭がいい。

 ほんの少しのヒントで答えを手繰り寄せる。


「……そうか。

 "避"は周囲からの攻撃にはすごく強い。

 けど、上下を狙われると対処が難しいんだ。

 正確には行動を阻害するような位置に障害物を作り出せば制限できちゃうから、そういった魔法を放てば良かったんだね。

 あたしの奇襲が通じなかったのは、技術力の高さと魔力の流れを読まれたことが大きくて、何も"避"に限った行動を取っているとは言いきれなかったんだ。

 それに多数からの遠距離攻撃にも対応が取れないだろうし、完璧に見えてやっぱり中位の技ってことなんだね」


 ……今回は少ない情報の中で随分と見切られたもんだな。

 まさか魔力感知の使用まで気づかれるとは想定外だ。

 しかしそれが正解で、何よりも強い武器になっていた。


「冷静に戦況を見極め、相手の弱点を探し出す。

 同時に何が最善かを判断し、仲間へ指示する決断力を持つこと。

 これが今のエルルに必要なもので、手にすれば絶大な力を発揮する武器となる。

 無理をして攻撃魔法で敵を一掃したり、支援魔法で強力する必要はない。

 誰よりもクレバーでいれば、まったく違った戦い方ができるようになるんだよ」


 そしてそれこそが後衛で戦う者に必要な技術で、そうすることで前衛の安全も確保する手段、さらには直線的な攻撃しかできない弓士ではなく魔術師だからこそできることだと俺は思っている。


「弓とは、あくまで遠距離の獲物を狩るために必要な武器だ。

 狩りでもあるまいし、人同士の近接戦闘に使えるようなものじゃない。

 それよりも遥かに魔術師のほうが万能で、パーティーには必要だと俺は考える」


 だからライナーに剣術も教えた。

 もちろん基礎的なものになるし、ディートリヒたちにも同じように型を学んでもらったが、弓での戦闘には限界がある。

 あのままじゃ、いちばん危なかったのはフランツじゃなく彼だったからな。


「……はぁ。

 いい手だと思ったんだけど、トーヤには通じなかったかぁ」

「でもすごくおしかったよ!」

「うん!

 エルルお姉ちゃんの魔法、いつもすごいの!」


 実際におしくはなかったんだが、あの魔法の使い方はさすがと言えるだけのものを意味している。


 あれは遠距離から相手の真下に魔法を出現させられるってことだ。

 それがどれだけすごいことなのか、魔法に秀でていない俺には答えられないが、それでも相当すごいことで、もしかしたらこの世界でそんな使い方ができる魔術師はいないんじゃないだろうかとも思えた。


 最近ではブランシェの凄まじさに加え、同じ高みにまで成長したフラヴィに隠れてしまっていたが、やはりこの子が使う魔法は非常に希少で、持ち前の判断力と合わせた使い方ができるエルルもまた、ずば抜けた才覚を持っていることは間違いない。


 大人たちを含め、どうにも俺の周りにはすごい使い手が集まってくるようだな。

 悪いことではないんだが、これは俺もうかうかしていると技量が抜かれそうだ。


 気を引き締めて俺も鍛錬を続けていかないといけないな。

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