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空人は気ままに世界を歩む  作者: しんた
第十三章 大切な家族のために
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これを逃しちゃダメだよ

 気合十分の3人がこちらに向かい、戦闘準備に入る。

 どうやら作戦も決まったみたいだが、"避"を看破できるかは戦ってみないと判断は難しいだろうな。


「いくよみんな!

 今度こそ、トーヤをギャフンと言わせるんだ!」

「「おー!」」


 ……だから、そんな言葉はどんな状況でも出てこないぞ……。

 微笑ましそうに子供たちを見つめる大人3人の視線がこちらにも向く。

 どうやら模擬戦に限ってはアウェーに近づいているようだ。


 まぁ、あれだけ頑張ってる子たちの応援をする気持ちも分からなくはないし、こうして対面している俺自身もそれを期待しているが、そう簡単に一撃を入れられるほど気を抜いていないからな。



 一気に駆け出す3人。

 いつもの陣形に変わらずの行動、か。

 エルルはある程度近づいたら後方で待機するのも同じだ。

 この距離ならすでに魔法の射程範囲内だから、何が飛んでくるのか楽しみだな。


 短剣の間合いに入るふたりは、直前に左右へ展開する。

 側面、もしくは背後からの同時攻撃だとしても"避"は看破できない。

 それを理解している子たちだから、狙いは別にあるってことだな。


撃つよ(ティレ)

 "小さな壁(スモールウォール)"!」


 発言と同時にこちらへ迫るふたり。

 左右からの接近に対応しようとした瞬間、軸足を押さえつけるように魔法壁が地面から出現した。

 目を丸くしたままバランスを崩し、ふらつく。


 その隙を見逃すことはないブランシェとフラヴィは果敢に迫る。


 しかし、同じタイミングで足が止まった。

 その様子を見た俺は思わず頬が緩んだ。


「な、なんで!?

 これを逃しちゃダメだよ!」


 驚愕しながらふたりへ言葉にするエルル。

 だが、眼前の子供たちはその意味を十二分に理解していた。


「だめなんだエルルお姉ちゃん!」

「このまま動いたらパパに投げられちゃうの!」

「……ど、どういうことなの?」


 正解を言葉にするのは簡単だ。

 しかしここは口を噤み、子供たちの話を聞くことにした。


「パパ、わざと(・・・)バランスを崩したの」

「隙を見せて近寄ったところを狙ってたんだ」


 こちらから視線を逸らさずに話す子供たちへ、笑みがこぼれる。

 それをしっかりと理解できるほどに強くなったんだな、ふたりとも。


「これもフェイントの一種だよ。

 隙を作れたように見せかけることで好機と判断される。

 そこを狙うのはたやすく、何よりも確実な一撃を打ち込めるんだ。

 特に相手が人間であれば効果的で、相当の熟練者以外ではまず引っかかる」


 さすがに達人の領域に足を踏み入れた者には通用しない。

 その裏をかいて攻撃してくるのは間違いないだろうな。


 そういった点を考慮すれば、足を止めて不用意に近づかなかったフラヴィとブランシェの判断は正しく、また冷静に相手の気配を見極めていたことになる。

 ここにくるまで相当の修練を積まなければならないんだが、やはりこの子たちは特殊すぎるのかもしれない。


 だが強くなるのはいいことだし、何よりも相手が危険な人間であれば不必要ってことはない。

 どんな力でも、敵より強くなければ負けが確定する世界にいるからな。


 それに、どうやらふたりは"気配察知の先"が見えつつあるようだ。

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